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第2話
デビュー予定メンバーの8人が集められた日。透の機嫌の悪さにビクビクしていた。その原因は、事務所の期待No.1の大河の存在だった。
「納得いかないなぁ。大河がセンターなんて」
「…俺が決めたことじゃないです。」
「自分の意見はないの?」
「意見?」
「自分がセンターに相応しいと思う?」
下を向く大河には悪いが、透がセンターになりたいのを察して、譲ればいいのにと思っていた。大河の実力はこのメンバーでは圧倒的に上で、バランスも悪いような気がした。
「大河は事務所から可愛いがられてるし、期待されてるから、ソロでいけばー?」
愛希が言うと、ほかのメンバーも同意して、ヒカルもそれに乗った。横目で透を見ると、目が合い、愛おしそうに微笑まれた。
(良かった…これが正解だったんだ。機嫌治った)
「ちょっと待ってください!おかしいですよ!!」
小さくなる大河に、それぞれが透へのアピールのために、大河を省く意見を言っていると、レイが大きな声で止めた。
(出た。優等生。僕が嫌いなタイプ。)
「これは、大河が決めたことでもないし、大河が決められることでもないです!一緒に頑張って行こうとは思わないんですか!?誰がセンターでも、グループのメンバーですよ!」
「レイ、もういいから」
「よくない!先輩方、今の状況はおかしいですよ!」
爽やかで練習生の中心にいるレイ。誰にでも話しかけて、仲良くなる。孤立している大河の唯一の友達。そして、今、透が「みんな」以上の感情を持つ人。
「そ、そうだな…。ごめんな、レイ」
あっさりと苦笑いで非を認めた透に、血管が切れそうな程感情がぐちゃぐちゃになった。ヒカルが周りを見ると、みんな同じ様子だった。
(大河より、レイを入れたくない)
「レイはさー?何が得意なの?」
「え…?」
「大河は、センターかどうかの話だけどさ、レイは何にも取り柄ないじゃん?なんでデビュー組なのかなぁっ?って思っただけー」
「そ…れは…」
「だって、ビジュアルなら、セナさんや透さんだしー、歌なら大河でしょ?ダンスならヒカルや晴天、陽介さんもいる。僕は可愛い系だしー…。分かんない」
愛希が思いのまま言葉をぶつけると、目の前のレイは色が無くなった。大河も唖然と愛機を見ていた。
「愛希、そんな事言うな。レイは魅力でいっぱいだよ。…レイ、気にするなよ?」
そう言って透に優しくハグされているレイを見て逆効果だったことを知る。まずは、大河を出すことに集中しなければ、透のために動かないと見てもらえない、と必死だった。
この日、選ばれたのは、あの時目が合ったヒカルだった。思い通りにいかないときに選ばれるのは、少ししんどかった。ヒカルの好きな言葉の愛撫は無く、苦しさに支配されるからだ。
「んぅ!!ぃやっ、っあ、ーーッーーッ」
「はぁ…やっぱ、ヒカルは、締まるッ」
「ーーッ!!」
(怖いっ、死ぬ!!)
首を絞められ、必死にはずそうとするも強い力だ。気持ちいいと思えず、苦しさと恐怖に必死に逃れようとするが、熱い楔は奥に叩きつけられる。萎えたままの自分の熱にも気付いてもらえない。
(怖い、助けて、誰か、助けて)
目の前に好きな人がいるのに、何故か助けを求める人に浮かばなかった。浮かんだのは相方だった。
(愛希、怖いよ!愛希、助けて!!)
意識が薄くなってきて、でもトんだら死ぬ気がした。
「はぁ、はぁ、ヒカル、愛してるよ」
(いらない、こんなの愛じゃない)
涙を流して意識を飛ばした。
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