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第21話
「痛っ…」
シャツを着るのでさえも痛そうな晴天の着替えを手伝って、ヒカルは眉を下げた。すると、そんな顔すんな、って笑ってくれる。
「ふうっ…。ヒカルありがとう!これでAltairの晴天に大変身だ!」
「もう…無理しなくていいって言われたのに」
呆れて笑うと、嬉しそうな笑顔が返ってきてくすぐったい。
今日は5人でのミュージックビデオ撮影。メイキングも入って気の抜けない日だ。翔は相変わらずファンサービスが上手くて見習っていきたいと様子を見た。
ヒカルの個人撮影の番になり、意識を切り替える。これからは、愛希とセットだったヒカルではなく、Altairのヒカルとして世に出る。
(覚悟を決めた。僕はここで、このメンバーとやっていく。そして、愛希を助ける)
愛希の違約金を少しでも減らしたいと思った。病室を出る際、自分が長谷川に言った言葉を思い出し、奮い立たせた。
『長谷川さん、僕、メインボーカルでやっていく。もう目立ちたくないなんて言ってられない。僕が愛希を支えなきゃ。』
カメラが向けられ、ライトが当たる。
重たい失恋ソングをどう表現するか。
カメラマンと呼吸を合わせて、出し惜しみなく自分を発揮する。
今まで抑えていたもの、遠慮していたもの、僕なんかが、という考えを全て捨てた。
「はい!OKです!」
「ありがとうございました。」
ペコリと頭を下げて、モニターをチェックしていると陽介から肩を組まれた。
「色気付きやがって〜」
「陽介さん、茶化さないでよ。真面目にやったのに。」
「茶化してないよ。やる気が出たのさ!ヒカルが本気出してくれるようなグループになれたんだってな!」
ニカっと笑われると、こちらも元気になる。陽介と晴天の『太陽コンビ』は温かくて元気の源だ。ファンサービスも優しいし、兄貴肌だ。その中でも陽介は透の次に年上で、リーダーを担ってくれた。
「あのヒカルが本気を出したんだ。世の中はぶったまげるぞ!翔もヒヤヒヤしてたからな?センターとられるかもって」
「いやいや、ビジュアルが無理だよ。翔に勝てる人いないよ」
「お前っ!失礼だな!」
プロレス技をかけられて慌てる。
こんな絡みをしたことなくて、普通に苦しいし殺されるかもと思った。
「泣くなよ!冗談だろーが!」
涙目を指差して笑われ、それがメイキングに残って恥ずかしい。でも、普通の男の子みたいで少し楽しかった。
「カット!チェック入ります!」
晴天の個人撮影を見学していると、カットがかかった瞬間、痛みに耐えるように顔を歪ませた。たぶん、ヒカルしか気付かないような一瞬のものだったが、ヒカルは慌てて駆け寄った。
「晴天さん、座って」
「ありがとう」
汗だくで、メイクさんが直しにきているのをそっと見守る。
「ふふっ」
晴天の笑い事に首を傾げる。
メイクさんが元の位置に戻ると、晴天はゆっくり立ち上がり、ヒカルに顔を近づけた。
「心配してくれてありがとう」
またウインクされて、ヒカルは真っ赤になる。それにケタケタ笑って、やる気が出たと気合いを入れていた。
ダンスシーンまで撮り終えて、この日は解散になった。今にも眠ってしまいそうなほど疲れた。ウトウトしていると、手を引かれ降ろされた。どこかも確認しないまま、引かれるまま歩き、瞼が何度も落ちた。
ガチャ
鍵も回してないのに開いたドアに、さすがに目を開いた。
「どこ…?」
「俺んち」
「あれ…晴天さん…」
「えぇ!?俺だから付いてきたんじゃないの?!」
あぶねー奴だな、と怒られながら部屋に入ると晴天の匂いに包まれる。
「まぁ、テキトーに寛いで…」
晴天に抱きついて、唇を合わせた。
理性がとぶ、と言うことを久しぶりに味わった。疲れているのに、欲しくて欲しくてたまらない。
「痛っ、ヒカル、」
痛みに耐える晴天を大きなソファーに押し倒して馬乗りになってキスをする。頭が沸騰しそうなほど、目の前のこの人が欲しくて必死に腰で熱を刺激する。
「ヒカルっ、まって、ヒカルっ」
焦って呼ぶ声もセクシーに聞こえて、晴天のベルトを外し、ファスナーを下げると勢いよく飛び出した熱にしゃぶりついた。
「っっつ!!ーーッぁ!!」
気持ち良さそうな声があがって、興奮する。口で愛撫しながら、自分のパンツや下着を脱いで、晴天で濡れた手を後ろに持っていく。
「はっ、んぅむ、っん、ん、」
声も止まらなくて、必死に快感を得ようと指を押し付ける。
スポンと指が抜かれて、驚いて晴天をみると、欲情してギラギラと光る目に腰が痺れた。
(食べられちゃう…)
晴天は自分の指を舐め、たっぷり濡らした後、馬乗りになるヒカルにゆっくりと指を入れた。
「ン…っあああ!」
「ヒカル…ヒカル」
「っあああ!気持ちっ、気持ちっ!」
たまらなくて、晴天の熱を握るだけになった。あまりの気持ち良さに、声を我慢することも忘れてひたすらに叫ぶ。
(なんで…こんなにっ!気持ち良すぎるっっ!!)
今までに数回体を重ねたが、いつも、恐ろしいほどの快感を与えられる。相性がいい、とすればこれほどまでに変わるのかと怯えた日もあった。
(この快感を知ったら抜けられない!)
大きな身体で包まれると、安心する。なのに、体内を抉る凶器は理性を切り裂いてはヒカルの恥ずかしい姿を晒した。
「ッィアアア!!はる、晴天さんっ、晴天さんっ!!ーーんぅ、っ、っ」
「我慢しないで、イって」
「っん、っ、ダメっ、ぼく、っ」
「イって、いいよっ、ヒカル、っ」
ぎゅっと晴天の服を握って天を仰ぐ。ググッと反って、目の前が快感に染まる。
「ッァア!!」
晴天の服にぶちまけて、ガクガクする身体を支えてもらう。
一気に眠気に襲われ、力が抜けたところで下からガンガン攻められ、目を見開いた。
「ーーッ!ッ!」
「ごめん、ヒカルっ、あと、少しだからっ」
「っ!ッア!ッ!ッ!」
「はっ、はっ、ヒカル、ヒカル、好きだよ」
「んぅっ!?ーーッ、あ、また、また、っ、クるっ!」
「ーーっ、ふぅ、っ…ーーン!!」
「ッぁああ!!」
連続の絶頂にふわふわする。
力強く抱きしめられて、ヒカルは目を閉じた。
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