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Hakoniwa 33

 三上が公園の入口に辿り着き、辺りを見渡すと、隅のベンチにぽつんと座る宮部の姿を見つけた。外灯に照らされた宮部とベンチが、白く浮かびあがっている。  紺地のダッフルコートに薄茶色のマフラーを首に巻きつけた姿は、正月明けの初日に言葉を交わした時の宮部と同じ姿だ。けれど、同じじゃない。  宮部を映す自分の瞳のフィルターが変化したのだと、唐突に気付く。  宮部はなにも変わっていない。変わったのは、自分のほうだ。  宮部はぼんやりと空を見上げていて、近付く三上に気付かない。 「こんな所にいたら、寒いだろう」  飛び跳ねるように振り返った宮部の表情が、驚きから徐々に怯えに変わっていく。  宮部が自分を見て怯える。胸の痛みが止まらない。言いようのない感情を心の中で咀嚼しても、形にならない。形がわからない。 「み、三上係長? お客様は……」 「もう帰った、あれは昔の恋人だ」  こいびと、と宮部が呟いた。 「用があって来ただけだ。悪ふざけが過ぎたし、もう会わない」  そうですか、といいながら俯いた宮部の隣に腰掛ける。ベンチはひんやりと冷たくて、三上はぶるりと身体を震わせた。こんな場所に宮部をひとりにさせた自分の行動を激しく後悔する。 「変なトコみせて、悪かったな」 「い、いえ、僕がお邪魔してしまって、本当に……」  しおれた声を出す宮部は、今にも消えてしまいそうだ。  どう説明するべきかと考えていると、宮部が先程とはうってかわり、しっかりとした口調で話し始めた。 「僕、三上係長に甘えすぎてしまいました。来週早々には部屋を見つけて、ちゃんと引っ越します」 「どうした、三万円台の賃貸が見つかるまでじっくり探せよ」  こだわっていただろう、と言葉を繋げても、大丈夫です、と返された。 「大丈夫じゃないだろう、いいからまだうちに居ろ」  思わず肩を掴むと、宮部は再び怯えたように三上の顔を見つめた。それからくしゃりと、顔を歪ませた。 「これ以上三上係長の傍にいたら僕、ひとりに戻るのがどんどん辛くなってしまいそうで、だから……」 「戻らなければいい、俺のところに居ろ、結音」  名前を呼ぶと、宮部はビクリと身体を揺らした。 「ど、どうしてそんな事言うんですか」  どうして。

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