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未来は幸せに満ち溢れている 4

 悔しいけれど、きっとあの人は三上さんの事を沢山知っているのだ。自分はまだ三上さんの趣味嗜好を語れるほど知っているわけじゃない。むしろ殆ど知らない。そう考えたら悲しくなって、気分はどんどん落ち込んだ。  先程までとはうってかわり、宮部はとぼとぼと力なく歩きながらホームへ向かった。電車を待つ列に並び、ポケットからスマートホンを取り出す。 『今夜のご飯、リクエストありますか』  三上さんへラインを送り、ハンバーグと言われるのかな、言われるんだろうなと悶々としながら数秒したのち、返信が届いた。 『宮部 結音』 「……へ?」  喉から変な声がでてしまった。前の人に振り返られて、慌てて下をむく。  この返信は、なんだ。どういうことだ。  なんと返したら良いか考え込んでいると、新たにメッセージが届いた。 『帰ったら、すぐ食べる』  頭の上から湯気があがっているんじゃないかと思うくらい、顔が熱くなった。この人はこれを、どこから送っているのだろうか。帰宅途中の電車の中か、それともタクシー、または歩き途中の信号待ちか。  信じられない。恥ずかしいったらない。こんなの、こんなこと。あの三上さんが、こんなバカップルみたいなこと。 (浮かれてしまうじゃないか……)  先程まで悶々としていた気持ちは一瞬で吹き飛び、最高に美味しい食事を用意して出迎えようと気合を入れた。  電車に乗り込み窓に目を向ければにやけた自分の顔が映り、慌てて口元をひきしめる。ハンバーグの情報は聞かなかったことにして、自分が作れる美味しいメニューを考えよう。ケーキは買わずに帰ろう。明日ふたりで、買いにいこう。  知らないことが沢山あるということは、これから知っていくことが沢山あるという事だ。少しずつ増えていくんだ。なんて楽しくて幸せな未来だろう。  宮部は電車に揺られながら、愛する人と同じ場所へ帰れる幸せを、ぎゅっとかみしめた。 おわり

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