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身悶えるほどに甘やかしたい<前編> 5

「なんだ、さっきまでのハイテンションはどうした?」  額を小突かれ、はっと顔を上げる。 「い、いえ……三上さん仕事忙しそうなのに、旅行につき合わせてしまったなと思って」  今度は勢いよくデコピンされた。地味に痛い。絶対赤くなってる。額をさする頭上から、ハアと大きなため息が聞こえた。 「お前のネガティブスイッチはどこについてるんだ、今すぐオフにしてやる」  急に背中や脇腹を触られて、駅構内だというのにひゃっと声を上げてしまった。 「や、やめ、くすぐったいですからっ」  たまらずひゃははと声を上げて笑ってしまった。脇腹は本当にやめていただきたい。やっとスイッチ探しを中断した三上さんは、今度は両手で僕の頬を思い切り左右に引っ張った。痛い。 「いいか、俺がお前と旅行に行きたくて連れてきたんだ。お前は誕生日なんだから、俺に好きなだけ甘えて沢山我儘を言えばいい。大抵の事はきいてやる」 「ふぁ、ふぁい……」  返事をするとやっと頬っぺたを解放され、ほら行くぞとせかされた。 (好きなだけ甘えて、沢山我儘……)  ひりつく頬をさすりながら、三上さんの隣に並んだ。心なしか三上さんの歩く速度が緩む。僕の速度に合わせてくれたのか。そんな三上さんの行動ひとつが、たまらなく嬉しい。  改札を出ると辺りは一気に観光ムードで、道行く人々は皆解放的な笑顔を浮かべて歩いている。お土産やさんも混雑していて、それらを目にしたら再びテンションが上がってきた。 「宿のシャトルバスまで三十分程度の時間があるから、少し散策するか」  三上さんは腕時計に視線を落としたまま、僕の肩を引き寄せた。一気に距離が狭まり心臓が音を立てたけれども、通行人の邪魔にならないように寄せただけだとわかっている。  どさくさにまぎれて更に寄り添ってみると、気付いた三上さんは少し笑い、僕の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。 「あっ、時間あるなら僕、ここ行ってみたいです!」  スマートフォンのブックマークを開き、保存していたサイトを見せる。

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