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身悶えるほどに甘やかしたい<前編> 8

「そ、それじゃあ、十九時からの夕食で……」  おずおずと答えると、仲居さんは親しみのこもった笑顔で、かしこまりましたと受けてくれた。ほっとして隣の三上さんに視線をむけると、こちらをずっと見ていたのか、フッと微笑まれた。こんなところで僕の心臓を打ち抜くのはやめてください。心肺停止したらどうするんですか。いやまてよ、いまの表情、親御さんが子供の成長を見守るような視線のようにも見えた。慈愛に満ちた表情。  だめだ、どちらにしても心肺停止案件だ。  仲居さんの後に続き部屋へと通された瞬間、思わず声が出てしまった。 「ひろい……」  この部屋は一体何平米あるんだ。  広々とした部屋には大きなツインベッドが置かれ、カウンターキッチンまで配置されている。正面奥は一面ガラス張りで、その先にはテラスと、大きな岩風呂が見えた。ざっと見ても五十平米は確実に超えている。 「いつまで突っ立っているんだ? 仲居さんはもう出て行ったぞ」  含み笑いとともに聞こえた三上さんの声にハッとして振り返れば、仲居さんの姿はもうなかった。大変な失礼をしてしまった。 「いいから、荷物を置いてこっちへ来い」  ベッド脇に腰掛けた三上さんが、自分の隣へ来いと手を叩いている。  ソファでなくベッドですかと思いながらも、荷物を壁脇へ置き、おずおずと三上さんに近付いた。隣に座るよりも先に腕を引かれ、気付いた時にはベッドの上で組み敷かれ、三上さんの端正な顔を仰いでいた。  口を開くよりも先に唇が重なり、小さな声が漏れる。深いキスのあとに唇は離れ、三上さんはハアと息を吐きながら僕の身体の上に覆いかぶさり、そのままぎゅううと強く抱きしめられた。 「み、三上さ……ちょ、流石にちょっと痛い、ですっ」  息も絶え絶えに抗議すると、舌打ちをされた。酷い。  ついばむようなキスが降り注ぎ、やがてひとまず満足したとでも言うように微笑むと、僕の隣へごろりと仰向けに寝転んだ。 「朝からずっと、心臓がキリキリして大変だった」 「えっ、三上さん、具合が悪かったんですか? 昼からビールなんて飲むから……」  三上さんの方へ顔を向けると、きゅっと鼻をつままれた。

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