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身悶えるほどに甘やかしたい<後編> 1
◇◇◇◇
旅行を週末に控えた月曜日。
新規クライアントから案件が通ったと連絡を受け、早速営業部長へ報告すると、良くやったと上機嫌で肩を叩かれた。
「好スタートだな。三上、引き続き頼む」
「来週頭には新規プランのプレゼンを先方へ提出する方向です」
スケジュールを確認しながら、アシスタントの女性も交えて打ち合わせをする中、今週土曜は出てこれるかと部長に問われた。
「すみません、今週末はでれません」
三上が即座に回答すると、女性と部長は少し驚いた様子で顔を見合わせた。
「仕事よりプライベートか。お前にしては珍しいじゃないか?」
「連絡はいつでもつくようにしておきますので」
部長は笑いながら了解と答え、しょうがねぇな、掛川に手伝わせるか、などと横暴な事を呟いている。掛川には申し訳ないが自力で回避するなりしてもらおう。
今週末は宮部の誕生日祝いを兼ねての温泉旅行なのだ。今回ばかりはプライベートを優先させて貰う。
欲しいものは特にないと言われ、じゃあと旅行を提案した時に見せた宮部の表情を思い出す。
宮部の性格からして面倒くさがる事はないだろうと予想したが、あんなに喜ぶとは思わなかった。今回は近場にしたけれど、次の旅行は遠出にしよう。
打ち合わせを終えて席へ戻る途中、アシスタントの女性が含み笑いをしながら隣を歩く三上を見上げる。
「最近の三上係長、なんていうか以前より丸くなったっていうか」
「今まで尖ってたか?」
「あはは、そんな事ないですけど。でも、表情が柔らかくなったと思う。何か心境の変化でもあったんでしょうかね〜?」
興味津々の面持ちで見つめられ、そうかと笑って受け流す。
(心境の変化か……)
宮部の存在が自分の根本的な部分にも影響を与えているのかと思えば、自然と頬が緩む。
「わ、三上係長、その笑顔で見つめるの反則……私は既婚者だから良いけどっ、独身の若い子だったら誤解しちゃいますよ〜気をつけて」
冗談まじりに背中を叩かれ、自分が今どんな顔をしていたのか気になった。職場では宮部の事を考えないように気をつけよう。
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