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身悶えるほどに甘やかしたい<後編> 3
◇◇◇
夕食の懐石料理にも、宮部は両眼を輝かせて喜んだ。和紙に書かれた献立を何度も眺めては、嬉しそうに笑う。それを見て三上の頬も緩む。宮部といると、自分の顔は緩みっぱなしなのかもしれない。時々気付いて締め直すのだけれど、恐らくすぐに緩んでしまう。このままではいつか、骨まで溶かされてしまいそうだ。
「季節のデザートって何でしょうね」
「この時期なら、桃かマンゴーじゃないか」
そうこうしているうちにデザートが運ばれてきた。マンゴーのソルベだと説明を受ける。スタッフが離れた後、宮部はひそひそ声で三上に問いかけた。
「三上さん、ソルベってなんですかね……見た感じはシャーベットですけど」
「ああ、確か果汁のみで凍らせた菓子がソルベで、果汁以外の材料も加えたものがシャーベットだな」
「そうなんだ、知らなかった。三上さん、お菓子に詳しいんですね」
「いや、他人の受け売りだ」
すぐに回答を出した三上に驚いた様子の宮部は、他人の、という部分にひっかかったのか、そっと口を閉じた。
「? どうした」
「い、いえ、なんでもないです」
丸く形どられた鮮やかな黄色の氷菓を口に含み、宮部は美味しいと言って微笑む。その様子を眺めているうちに、再びスタッフが現れた。
「誕生日のお客様へ、こちらは白桃のケーキでございます」
目の前に白桃でデコレーションされたショートケーキが置かれると、宮部は大きな両眼で瞬きを繰り返した。
「誕生日ケーキは別腹でいけるだろう?」
三上の言葉に、宮部は顔を真っ赤にしながら、ありがとうございますとお礼の言葉を口にした。
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