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三上さんの前世について考えた日 4
普段は利用しない炭酸泉も、今日の三上さんは僕に付き合って入ってくれているらしい。肌がシュワシュワして面白い。じっと眺めていると、みるみるうちに腕や脚や身体全部、細かい気泡が付着していく。面白い。
クッと喉で笑う声が耳に入り顔を上げると、三上さんは僕を見て完全に笑っている。
「お前の行動、あの子と全く一緒だぞ」
三上さんの視線の方向へ目を向ければ、離れた場所で同じく炭酸泉に浸かっている小学生位の男の子が、自分の体につく気泡を熱心に眺めていた。隣のお父さんらしき人は、半分寝ている。
気を取り直して露天風呂へ移動し、少しゆっくりした後、三上さんが上がると言うので一緒に出る事にした。本当はもう少しのんびりしたい気持ちもあるけれど、また今度にしよう。ジムのスパはとても良い文明だ。
帰り際に天野さんの言葉を思い出して、受付にあるプログラム一覧を手に取った。プールの他、スタジオレッスンのプログラムや、球技のプログラムも置いてある。
「ジムって色々やってるんだなぁ」
感心して呟いた言葉が受付のお姉さんに聞こえてしまったようで、クスクスと笑われてしまった。一枚どうぞと微笑まれ、有り難く頂いて頭を下げた。
「宮部、置いてくぞ」
ジムを出て行く三上さんの後ろ姿に気付き、慌てて追いかける。
ジムからマンションまでは徒歩数分の距離だ。帰り道にスーパーで夕飯の買い出しをして、帰宅した頃には十六時をまわっていた。
今日の夕食は自宅で焼肉。無煙ロースターを準備する三上さんの表情は楽しそうだ。
「運動したから、お腹空きましたね」
「そうだな」
言いながら僕のお腹がぐうと鳴り、早く食べましょうと誤魔化して準備を急いだ。
ジュウジュウと音をたてる肉を囲み、三上さんとご飯を食べる。
沢山運動して、沢山美味しいものを食べて、お風呂に入って、ベッドで眠る。
なんて素晴らしい休日なんだろう。
「三上さん、来週も泳ぎに行きますか?」
「そうだな、仕事が入らなければ」
「じゃあ僕、水泳教室に参加してみます」
すると三上さんは、予想していたよりも嬉しそうな顔をして、そうかと言ってくれた。
そんな顔をされたら、もう頑張るしかない。こうなったら目標は三上さんと一緒にプールで泳ぐ事にしよう。無謀かな。
「宮部、野菜よりも肉を食え」
「えっ、健康的には肉よりも野菜じゃないんですか」
「お前はまず肉をつけた方が良いからいいんだ」
焼き上がった肉をポイポイと皿に載せられて、急かされるように口へと放り込む作業になってきた。
「ま、待ってください、もう少しゆっくり食べたいです……!」
ストップをかけた僕を見つめながら、三上さんは楽しそうに笑った。
〈おわり〉
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