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いつまでたっても慣れない案件 4
頭の中をグルグルと回しながら、返答を求められているわけではないのか、決定事項を告げられただけか、などとグダグダと考えを巡らせた結果、行き着いた言葉を口にした。
「わ、わ……わかりました」
緊張から掠れた声がでてしまった。静まれ心臓。でないといつまでも眠れない。
ぎゅっと目を瞑り、気持ちを切り替えようとした瞬間、三上さんの喉元からクッと音が漏れ、それからすぐにクククと明らかな笑い声が聞こえてきた。
「ふふ……」
小さな笑い声とともに、後頭部をわさわさと撫でられる。よくわからないけれど、気分を害してはいないようだ。宮部が三上の背中に右手を回すと、顔を上げてと囁かれ、言われた通りに顔を上げれば、ついばむようなキスをされた。
「お前と居ると、気持ちが緩む」
「そ、そうですか……」
唇が触れる寸前で好きだと囁かれ、下唇を甘噛みされた。胸が苦しい。胸を掴まれて強く絞られるような痛みが走る。それは熱をもって宮部の身体を走り抜け、その後もきゅうきゅうと胸の痛みは続いた。
こんなことを言われると、自分は物凄く愛されているんじゃないだろうかと錯覚を起こしてしまう。自惚れたら駄目だ。三上さんが自分と一緒に居てくれるという事実だけでもう、幸せ過ぎて両手で抱えきれない程だというのに。
「おやすみ」
名残惜しげに唇が離れ、三上は宮部を抱きしめたまま眠りはじめた。宮部としては少々辛い体勢で、けれどもう少しこのままで居たくて、三上の胸に額をつけたまま目を閉じた。
やがて聞こえ始めた三上の静かな寝息に安心して息を吐き、やっと落ち着いてきた自分の心臓の音を聞きながら、宮部も静かに眠りの海へと身を任せた。
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