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いつまでたっても慣れない案件 5

◇◇◇  土曜日の朝。  宮部は六時に起床し、三上がシャワーを浴びている間に朝食を準備して、六時半から二人で朝食をとり、七時にスーツ姿の三上を見送った。  玄関の扉をきっちりと閉めた後、キッチンへ戻り、食器を軽く濯いで食洗機にセットする。  食洗機という文明の利器は、三上のマンションに設置してあるものを生まれて初めて使用した。初めはこれで汚れが取れるのだろうか、手洗いの方が良いのではないかと不信感を持って使用したのだけれど、高温洗浄でしっかりと綺麗に仕上がる上に手洗いよりも節水、更には時間の短縮にもなるのだから、使わない手はない。  以前職場で主婦の社員さんが「食洗機は一度使ったら手放せない」と話しているのを聞いた時は軽く聞き流したけれど、今なら大きく同意する。  先日、三上に「マンション購入の際は食洗機付だと嬉しいです」と宮部が控えめにお願いしたところ、感動の表情を浮かべながら必須項目に入れてくれたから、宮部のお願いは成就確定だ。  珈琲サーバーで新しく珈琲を落とし、マグカップを片手にダイニングテーブルへ戻り腰を降ろしたところで、宮部はやっと一息ついた。  リビングのテレビへ目を向ければ、ニュース番組が流れている。ポイントを押さえてサクサクと進むニュース番組をぼんやりと眺めながら、宮部は本日のタイムスケジュールを頭の中で整理していく。 (水泳教室は三時からだから、この後洗濯機を回して、午前中には一通りの掃除を終わらそう。風呂場とトイレを掃除して、全体に掃除機をかけて……空き部屋も掃除機だけかけておこうかな)  ズズズと珈琲を飲みながら、「空き部屋」の事を考えた。2LDKの敷地の中で、使われていない部屋。中へ入ると目につくのは、本棚とデスクトップパソコンが置いてある机。クローゼットは空だった。  三上は寝室にあるクローゼットを使っていて、パソコンもリビングに置いてあるノートパソコンをメインに使っている。三上自身も恐らく滅多に足を踏み入れていない。

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