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いつまでたっても慣れない案件 9

◇◇◇  水泳教室への参加は、今回で二度目になる。  初心者教室はあまり需要がないらしく、前回の参加者は宮部のみだった。インストラクターの天野からマンツーマン指導を受ける事になった宮部は、水に浮く事すらままならない自分ごときが参加するべきではなかったんじゃなかろうかと青ざめた。  天野と三上が談笑している隣で緊張のあまり腹まで痛くなったのだけれども、いざレッスンが始まってみれば、天野の指導は無理なく丁寧で、彼の気さくな性格にも助けられ、宮部はさほど緊張する事なくレッスンを受ける事が出来た。  二回目の今回は、六十代位の御夫婦と宮部の三名参加で、和気あいあいとした雰囲気でレッスンに打ち込めた。天野先生の明るい授業は、老若男女問わず楽しく学ぶ事が出来る。  今日はビート版を股に挟み、腕の泳ぎだけで進む練習をしたのだけれど、なんと十メートルも泳ぐ事が出来た。宮部にとってそれは目覚ましい成長ぶりで、天野にも褒められ、宮部は大満足のままレッスンを終えた。  水泳教室のあとの楽しみは勿論スパ施設だ。今夜はひとりきりだし、時間を気にする事なくお風呂を満喫しようと朝から決めていた。  夕方の浴場はそれなりに利用者も多く、幾つかある浴槽のどれもが譲り合いながらスペースを確保する程度には混んでいる。宮部一番のお気に入りであるジェットバスは少し待っても空きそうもないので、諦めて露天風呂へ向かう事にした。 (夜ご飯はどうしようかな。ひとりだし、たまには外食でもしてみようか……)  スパ施設のメインともいえる露天風呂に浸かり、夕暮れ手前の青い空を見上げながらぼんやりと考えていると、突然背後から名前を呼ばれた。 「あ、宮部さんだ~、お疲れ様です」  振り返ると、内風呂と露天風呂を繋ぐ出入口から天野がこちらへ向かって歩いてくる姿が目に入った。 「あ、天野さ……」  笑顔で挨拶をしかけたところで、思わず目と口が固まった。 (わ、わあー……)  タオルで身体を隠すことなく堂々とした立ち姿の天野さんの股間は同性ながらも唾を飲み込む程のマグナム級で、人の裸を見る事に慣れていない宮部は直視出来ず、慌てて目を逸らした。

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