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いつまでたっても慣れない案件 18
「三上さんが誰かとジムに来るなんて今まで無かったから、アレっと思ったんですよね。これは親しい間柄なのかなって。二回目だったかな、三上さんと立ち話をした時に宮部さんの印象を話したんですよ。そしたら三上さん……」
言葉を止めて再び思い出したように含み笑いを浮かべる天野を見つめ、宮部は思わず唾を飲み込んだ。喉が渇いていると気付き、烏龍茶に手を伸ばす。
「俺が聞くよりも先に、宮部はこうでああでこんな所が素晴らしくて可愛くて、家ではどうだとか料理が美味いとか、惚気が止まらなすぎて俺はビビりました……だってそんなキャラじゃないですよあの人? 極め付きに、宮部に手を出すなよと釘まで刺されましたから。この人に一体何が起きたんだって、かなりの衝撃でしたよ」
「く、くぎ……?!」
アハハと笑う目の前の天野は、嘘を言っている様には見えない。けれど冷静沈着な三上がそんな惚気に近いような内輪話を他人に話すなんて、想像出来ない。にわかには信じられない。そもそも自分にそんな褒められる箇所があるなんておかしい。
「三上さん、やっぱりなにかおかしな魔法にでも……」
「え、魔法? あはは、宮部さん面白い事いうね~」
思わず口に出してしまった台詞を天野に拾われて、ハッと我に返る。耳まで熱くなり、いやそのだって、と言い訳を付け足そうと口を開くと同時に天野も口を開いた。
「そしたら三上さんに魔法をかけたのは宮部さんだよね? それって凄い事だよ、宮部さんは凄い。俺が言っても響かないかもしれないけど、宮部さんはほんとにキラキラしてるよ。全然自信持っていいよ」
特に三上さんをみてる時の目はキラッキラだよと付け足され、一気に全身が熱くなる。
「いや、それはよくわかりませんけど多分、目が悪いから……だと思います。いうじゃないですか、視力悪いと眼球が潤みがちだって」
「あははそんなのあるの? そういえば宮部さん、水泳の時はコンタクト入れてるの? 裸眼?」」
「裸眼です、だから三上さんの泳ぐ姿もぼやけてみえて残念で……そんなだから食い入るように眺めてしまうんですよね」
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