100 / 110
いつまでたっても慣れない案件 23
◇◇◇◇
休日と言えども宮部の朝は平日と変わらない。三上と暮らすようになってから、目覚めて暫くは眠る三上の隣で余韻に浸るようになったけれど、一人暮らしの頃は毎朝きっちり六時起床が習慣だった。
久々の独り寝から目覚め、一人分の目玉焼きとサラダを作りパンを焼いて朝食をとり、食事を終えてすぐに食器を洗い、食後の珈琲を飲み一息ついた。
窓へ目を向ければ見事な晴れ空が広がっている。快晴を目にしてしまうと身体がウズウズして、洗濯出来るものはないか、干せる物はないかと必要以上に探してしまう。昨日も朝から洗濯日和だったから、衣類にシーツ、玄関マットとキッチンマットは既に洗濯済みだ。
リビングをぐるりと見回し、カーテンに目を止める。自分がここへ居候を始めてからまだ一度も洗った事がない。厚地のカーテンは年末に洗うとして、レース地のカーテンを洗う事にした。
寝室とリビングのレースカーテンを取り外し、ネットに入れて丸洗い、軽く脱水してからカーテンレールに吊り戻す。窓を全開にして換気を良くしておけば、午後には完全に乾くだろう。
掛け布団と枕は陰干しをして、それから三上の白いTシャツを干した後、手すりに寄りかかり、前方に広がる景色を眺めた。
「天気が良いって最高だな」
頭上に広がる青空を眺めながらひとりごち、宮部は口角を引き上げた。ほのかに頬を撫でる風が心地良い。
前方には高層マンション群が見える。そういえば、三上は南千住のマンションも引越し候補に入れていると話をしていた。そんな時、三上は宮部にも意見を聞いてくるけれど、宮部としては三上と一緒に居られるのなら何処でも良いというのが本音だ。
目の前に広がる景色をぼんやりと眺めながらふと、手すりに寄りかかる三上の後ろ姿を思い出した。
(そういえば、三上さんはよくこうしていたな)
三上と暮らし始めた頃、季節は冬だった。
ともだちにシェアしよう!