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いつまでたっても慣れない案件 27
三上の言葉を理解するよりも先に、立ち上がった三上に腕を掴まれ、リビングから寝室へと引きずられるように連れていかれた。
「あ、あの……?」
「言っただろう、帰ったらすぐに宮部とセックスするって」
ケロリと返され、有無も言わさぬ勢いでベッドの上に押し倒される。スーツ姿のままの三上を見上げながら、宮部は狗鷲に捕獲された野兎の如く身体を硬直させた。
つい今しがたまで色気のある会話をしていたわけでもなく、昼食を作ろうかと考えていた矢先、時刻はカーテン越しに柔らかな午後の陽が差し込む昼下がりだ。唐突に身体を求められても心と身体が追いつかない。自分は恋愛経験値が一般よりも確実に低いのだ、この状況にどう対応したら良いのか、何が正解なのかわからない。
「何をぶつぶつ言ってるんだ」
三上の声にハッと我に返ると、大きな手に髪をくしゃりと混ぜられ、覗き込むような視線を向けられた。緩やかな手つきで眼鏡を外され、心臓が大きく跳ねた瞬間、唇をちゅうと吸われた。会いたかったと囁かれ、嬉しさと恥ずかしさで眼の奥が熱くなる。
深いネイビー色にピンストライプ地のスーツは長身の三上によく似合っている。上品なジャケットを雑に脱ぎ捨て、宮部に覆い被さり触れるだけのキスを額から鎖骨までくまなく落とす。三上は両手を宮部のTシャツ下へと潜り込ませると、器用に宮部の身体からシャツを抜きとり、ベッド脇へと放り投げた。
「み、三上さんあの、こんな明るい時間から」
「お前の顔がよく見える」
自分の姿が丸見えだと気付き、慌てて両手で顔を隠してみても、難無くその手を剥ぎ取られた。
「ま、待ってください、心の準備というか切り替えというか」
「じゃあ今からしながらしたらいい」
三上は時々難易度の高い日本語を使う。意味がわからない。
「この一週間ずっと我慢していたんだ、俺はもう宮部欠乏症だ、早く摂取しないと身体の機能が停止する」
ドット柄のネクタイをほどきながら自分を見下ろす三上の姿は、ため息が出る程の色気に満ち溢れているというのに、口に出している言葉はとてもよくわからない。
解いたネクタイもベッド脇に投げ捨てるのかと思いきや、宮部の細い両手首を左手で器用にまとめて掴み宮部の頭上の位置に置くと、手にしたネクタイをクルリと巻き付け、固定した。
「……えっ!?」
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