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いつまでたっても慣れない案件 30

 後孔を指腹で揉まれる恥ずかしさから両眼を瞑ると、瞼越しにキスをされた。両眼を開くと自分を見下ろす三上の双眸と視線が交わり、緩やかな微笑みに胸が締め付けられる。  三上の表情から、怒っているようには見えない。けれど腕の拘束は外して貰えないままで、宮部は戸惑い、視線を揺らした。  絶対的に経験数の少ない宮部が言ったところで説得力はないけれど、三上は性欲が強い方ではないかと思っている。恋人となって間もない頃は、毎日とまでは行かないまでも週に何度も何回も求められ、体力的について行けず途中でダウンしてしまう事が何度もあった。  八月下旬から残業続きの期間に入り、平日はお互いに寄り添って眠るまでに留めていることもあって、週末の夜は甘く長い時間を過ごす事が自然の流れとなっていたのだけれど、今、目の前の三上はこれまでにない程に甘く濃厚な動きで、宮部の身体をほどいてゆく。 「ん、ふ……う」  一週間ぶりに開く宮部の小さな蕾に、三上は急かす事無くゆっくりと右の指先を沿わせながら、甘い吐息を零す宮部の唇を優しく塞ぐ。宮部の柔らかな唇の感触を味わうように、唇で挟み、食し、口角から唇の表面をくまなく舌先で舐め上げる。動きのひとつひとつ、自分を大切に思ってくれていると伝わってくる。もっと欲しいと三上の唇を求めながら、宮部は自ら身体を開いた。 「一週間ぶりだから、少し痛むか」 「痛く、ない……です」  自分の髪を梳くように撫でる三上の指先と、ゆっくりと頬を滑る三上の唇から溢れ出る優しさを感じながら目を閉じる。優しすぎて、嬉しくて、身体が震える。身体の奥底から湧き上がる感情が抑えられない。求めてしまう、身の丈を超えて、欲しがってしまう。 「泰生、さん……泰生さん、たいせい……」 「どうした、結音」  三上は宮部の唇の端にキスをして、額をこつんと押し当てた。窓から差し込む陽が、ベッドの上で重なる三上と自分に降り注いでいる。この明るい世界で、心から肌を合わせる事が出来る唯一の人の瞳を見つめながら、宮部はゆっくりと口を開いた。 「大好き、大好き、……あなたしかいらない、我儘もいわない、だから……」  三上は少し驚いた表情で自分を見つめている。聞いてほしい、許してほしい。 「だから嫌いにならないで、ずっと一緒にいて」  腕が使えないかわりに三上の左掌に自分の頬を押し当てると、三上の熱が伝わってきて、もっと感じたくて、宮部は更に擦り寄せた。

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