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第6話
「昨日、気を付けろよって言ってたけど、何かあったの?」
目元から手が離されてハルは俺の顔を訝しげに見る。
「···何で?」
「俺あの後帰ってたら凄いスピードで車がスレスレを走って行って···」
そう言うとハルは少し目を見張った。
「怪我はなかったか?」
「うん」
「···そうか」
「···ねえ、質問に答えてないよ」
ハルの腕を掴んでそう言うとハルは困ったように笑う。
「話さなきゃダメか?」
「···話したら、もう俺と話してくれなくなる?」
「もしかしたらな」
「···なら、話さなくていい」
ハルに嫌われるのは嫌だ。
気になる事も我慢しなきゃいけない。
「ごめんな」
「ううん。」
ハルの腕を離すとその手で頭を撫でられる。
「今日はもう帰れ。」
「···折角ハルが来たのに」
「じゃあ俺も帰ろっかな」
「ダメだよ。留年するよ」
「···それはまずいな」
ハルは嫌そうに顔を歪める。
「わかった。俺はまだいるけど、お前は帰って今日は安静にしとけ。あ、送っていこうか?」
「ううん。大丈夫」
保冷剤を離し頬に湿布を貼ってハルと一緒に教室に戻る。カバンを取って「じゃあね」とハルに言うと片手をあげて「また明日」って言ってくれた。
明日もハルに会える。
それが嬉しくて、自然と口角が上がった。
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