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第13話

少しずつ俺たちの関係に距離が開き始めたのはその頃あたりか。 毎日どうにかこの裏の世界が似合う人に、そしてこの世界で恐れられるような、そんな風になりたいと努めて感情を押し殺しては仕事に没頭し、できる限りのトレーニングをした。 陽和からくる連絡も返そうと思うけど、いつも昼頃に来たメッセージを確認するのは夜中の一時を回ったあたりだ。そんな時間に返信しても迷惑だろうし、と返事をすることはほとんど無い。 「若、親父が呼んでます」 俺とよく仕事をするようになった世那(セナ)が部屋の前からそう声をかけてくる。それに適当に返事をして、座っていた椅子から立ち上がり部屋を出ると柔らかい笑顔で世那が立っていて、「おはようございます」と頭を下げた。 「おはよう」 「少し顔色が悪いみたいですが···」 「大丈夫だ」 親父の部屋に向かって足を進める。 その間にも世那は他愛の無い話をしてくれた。その話が楽しくてどれだけ面白くても、あまり大きなリアクションを取らない。下の者に対してすら気軽に笑顔を見せてはいけないのだと知ってからずっとそうだ。 「では、ここで待ってますね」 「いや、お前は部屋に戻ってていい」 「わかりました」 親父の部屋の前について世那が俺の側からいなくなったのを確認してから中に声をかける。 「俺だ」 「入れ」 親父の低い声、それを聞いてからドアを開けて中に入ると親父だけだと思っていたのにお袋も一緒にソファーに座っていて優しい顔を俺に向ける。 「座れ」 「···何だよ」 「最近、お前が仕事ばっかりしてるらしいからな、気分転換にちょっとばかし外に行って来い」 「いらねえ」 「これは提案じゃなくて命令だ」 俺にとってはただの親父だけど、俺の立場からしてみれば親父は上司であって、上司からの命令は受けるしか無い。 「···わかった」 「よし。」 親父の言葉に渋々頷けばお袋が「晴臣は沖縄好き?」と突然聞いてくる。 「行ったことねえけど」 「なら沖縄行ってきたらいいじゃない、昨日テレビでやってたのよ、すごく綺麗で···ねえ、私達も行きましょう?」 「そうだな」 親父とお袋は2人の世界に入っちまって、その様子を見てる息子の俺は少し複雑な気分である。 「そうだ!陽和くんも誘って···ね?」 俺がいることを数分経って、やっと思い出したのかお袋がそう言う。 「あいつは学校がある」 「あら、そうなの···?どこか3日くらい休みが無いか聞いてみたらどう?」 「···そんなに行かせたいのかよ」 「当たり前でしょう!最近ずっと引きこもってばかりなんだから」 どうやら俺がどこかに出かけることは決定済みらしい。一応話を終えたので親父の部屋を出て自室に帰る。 すぐに陽和にメッセージを送り、満足してるとすぐに陽和から電話がかかってきて、焦って通話ボタンを押した。

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