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第14話

「はい」 「ハル!行く!」 「行くってお前…休みあんのかよ」 「ある!」 言い切った陽和、その休みは近い内にあるらしい。じゃあその時に行こう。という話になって陽和が嬉しそうに笑う声が電話越しに聞こえた。その声に俺も嬉しく思ったのに、 「────おーいヒヨコ、早くしねえと遅れんぞ!」 「ちょっと、ヒヨコって呼ぶのやめてって言ってるでしょ!」 なんて仲よさ気な声が聞こえてきちゃその気持ちもだんだんと冷めてくる。 「ごめんハル、また後で電話するね!」 「いらねえ」 「え···?ハル···?」 陽和の不安そうな心配をしているような、そんな声が聞こえてきたけど、それを無視して電話を切った。 別に、陽和が大学の奴らと仲良くなるのはいい。それはあいつの勝手だし俺が口出すことじゃ無いのはわかってる。でも実際、そう言う仲の良い場面を見せ付けられると腹が立ってしまうのは仕方が無いことだと思う。 「···わかってんだけどなぁ」 はぁ、と息を吐いてると「赤石さんが来られました」と部屋の外から世那の声が聞こえたのと同時、ドアが開けられて慌ただしく中に入ってきた金髪の男。 「ひっさしぶりー!!」 「赤石···」 「そろそろ若が俺の顔見たがってるんじゃ無いかって思ってさー!」 ヘラヘラと笑いながらそう言う赤石は元々は俺の部下で、今は同盟を結んでる桜樹組の若頭、桜樹燈人の恋人で、浅羽から離れそいつに付きっきりだ。元々の部下ではあるけれど、そう言う風に接することはあまり無かったから赤石は今も遠慮なんて皆無でソファーに寝転んでいる。 「ちょっと最近変な輩がウジャウジャいて燈人が困ってるんだよね」 「···変な輩?」 「そう、桜樹組の周りを嗅ぎ回ってる奴がいて、様子見してたらいつの間にかマスク被ってら奴らが組の周りにいたりしてね…あれはうちを潰そうとしてるのかなぁ。とりあえず数人捕まえて聞き出してるみたいだけど、そいつら全員身長の高い金髪をした男に頼まれたってさ」 「金髪···?」 「そう、金髪、でもよく知りもしない奴に頼まれた仕事引き受けるよね···それにその仕事の相手がヤクザなんだよ?」 「······俺もその情報を知ってる···」 同じような情報をついさっき聞いたばかりだ。 赤石は訝し気に眉を寄せて「どういうこと?」と聞いてくる。 「ちょうどこの周りに、うちのことを嗅ぎ回ってるやつを見つけて捕まえたんだ、そいつも言ってた、長身で金髪の男に頼まれたって」 「······まさか、同盟傘下諸共浅羽組を潰すつもり、とか?」 答えはそれだとは限らないけど、その筋であることは何となくわかる。 「···桜樹で拘束してる奴らはどんな奴らだ。」 「ごめん、俺自身が聞き出したわけじゃないからわからないんだ、燈人がやって···あ、そうだ、燈人呼ぼうか?」 「···いや、俺が行く。けど···そうだな、他の同盟を結んでる所にも連絡を入れてみる。同じようなことになっていたら全体で話し合った方が早い」 また仕事が増えた。頭を抱えたくなるのを堪える。 その話が終わった後も明るく違う話しをする赤石を見て少し元気を分けてもらった。

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