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第17話
飯を終えて部屋に帰ってきてから携帯を取り出してとりあえず陽和からのメッセージを見る。
どうやら俺の機嫌が悪いと思って「何か悪い事した?」というような内容が送られてきていた。
これは文字で説明しても上手く伝わらないと思うし、大体打つのが面倒だし。
電話をかけると3回目のコール音が聞こえたあたりで「もしもし」と陽和の少し暗い声がした。
「悪い、寝ちまってたんだ」
「···いいけど、ねえ、何か怒らせるようなこと、した···?」
「いや、ただの俺の嫉妬だ」
「嫉妬···ふふっ、ハルでも嫉妬するんだね」
「当たり前だろうが」
そんな話をしてると部屋のドアがノックされて「悪い、また後でかけ直す」と言って電話を切った。
「はい」
「すみません、早河です」
「入れ」
早河がまだ家に帰ってなかったのは驚いたが、ずっと俺と親父が頼んだ同盟を組んでる組と連絡を取り続けていてくれたんだと思うと、本当にありがたい。
「先程の件ですが、桜樹組以外にも同じようなことにあったところが3つありました。そしてそれぞれ数人の男を拘束し、そいつらから吐かせた情報は全部同じです」
「···長身の、金髪男が」
「はい。それからそいつらの身元を確認すると全員が金に困っていた一般人のようです」
それを聞いて呆れて溜息が出る。
頼まれてやる方もそうだけれど、金のない一般人を狙ってそういうことをやらせるなんて…どうやら例の金髪男は相当なクズらしい。
「親父にも報告しましたが、この件に関しては若に任せると」
「わかった。···とりあえず会合を開く準備をする、後は俺がやるから、お前は帰っていいぞ」
「え、ですが···」
「琴音が待ってんだろ、あんまりあいつを一人にしたら俺に文句言ってくるんだよ」
「···すみません」
「いや、最近はそういう時くらいしか琴音と連絡取らねえしな、内容はどんなのでも話せるのは嬉しい。」
全く見なくなった高校生の時、仲の良かった他校のリーダー。今はあいつが何をしているのか、俺は全く知らない。
「では、お疲れ様です」
「ああ、お疲れ」
早河に手を振って椅子に座り、会合の日はいつにしようか···とカレンダーを睨むように見る。
「···陽和との沖縄はこの件か落ち着いてからかな···」
それを伝えることを決心して陽和に電話をかけ直す。
また3回コール音が聞こえてすぐ、陽和の声がした。
「悪い」
「ううん、大丈夫」
その陽和の声の後ろからやたらとうるさい声が聞こえてくる。誰かと食事に行ってるのだろうか、それなら今は電話しない方が良かったのかもしれない。
「沖縄の事なんだけどよ···」
「えっ、ごめん、何て···?」
「···沖縄の事」
うるさくてちゃんと声が届かない。
「うん!どうしたの?」
「あれさ···」
「───ちょっとぉ、陽和くん、誰と電話してるのぉ···?」
突然、女の甘えたような声が聞こえてくる。
「もしもぉし、陽和くんは今私と楽しんでるんだから、邪魔しないでくれるぅ〜?」
「···············」
「ちょっとやめてよ!ごめん、ハル!実は今···」
「別にいい。沖縄の件だが、あれ、仕事の都合で行けなくなった」
「えっ···」
「悪い。これからしばらく忙しくなる、会うこともこうやって連絡取ることも多分、厳しいから···それだけ伝えようと思って」
そう言うと明らかに声のトーンが落ちた陽和が「そっか···」なんて言うもんだから、申し訳なくなるのと同時、どうやら陽和は楽しんでるようだから別に大丈夫だろ。なんて事を勝手に思って「じゃあな」と一方的に電話を切った。
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