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第26話

追いかけられた恐怖っていうのはなかなか拭えないらしい。ご飯を出してくれたけどそれもあまり喉を通らずに、ただハルのすぐ側でジッとする。ただそれだけだけど今は一番それが安心できた。 「寝るか」 「···うん」 さっきまで仕事をしていたハルはお風呂に入って髪を乾かした後、すぐにベッドに行って寝転んだ。俺も隣にゴロンと横になって、擦り寄る。 「考えたんだけどな」 「何を···?」 「今日お前を尾けていたやつが、俺たちと対抗している奴等なら、もうお前は俺の恋人だって情報が流れていて···お前の家も向こうにはバレてる筈だ。」 「そんな···」 「暫くはここにいてジッとしているのが一番安全だと思う。この家の中には絶対誰かがいるし、何かあってもすぐに対処できる。」 「その間、大学は···」 「車で送り迎えすることになるな。だから暫くは大学とここの行き来しかできない。それに大学内でお前をずっと見ていてやることも無理だ、お前がそれでいいなら、行けばいい」 送り迎えって···そんな事したらここの人に沢山迷惑を掛けることになる。どうしようと悩んでいると「これが終わるまで、休学は···無理だよなぁ」とハルが呟いた。 「休学···」 「けど、まあそうしたら後からお前が大変だろうからな」 「···でも、送り迎えって、ここの人が迷惑かかるんじゃないかなって···」 「そんなこと考えなくていい。俺が命令したらそれがあいつらの仕事になって、言われたことをする事でお金がもらえる。」 「···でも」 「"でも"ばっかりじゃねえか、迷惑とか何も考えないで、お前はどうしたいんだ」 至近距離でジッと見つめられる。 そりゃ、大学にだってちゃんと行きたいし、でも怖い目には会いたくない。それを伝えると「じゃあ決まりだ」と俺の髪を撫でる。 「大学内では守れないつったけど、人が多いし、そんな場所で何かをしようなんて思わねえだろうからな···」 「ハル···」 「何だ」 ハルの唇に噛み付くようにキスをする。 目を細めたハルは俺の後頭部に手を回して逃げられないようにすると舌を入れてきた。 「···ふ、っん、は···」 「あ、そう言えば」 それはすぐに離れて、"何?"とジッとハルを見ると睨むように俺を見て「お前、女とキスしてたろ」と言われて体が固まった。 「あ、あれはね、あれは···」 「あれは?」 ゆっくり起き上がったハルは俺の太ももと腹の間辺りに跨ってくる。 「あの、ご飯に行こうって言われて、断ったんだけど、これで最後にするからって···!」 「で?」 「お店、出たら名前呼ばれて、振り返ったらキス、されたの···」 「ふぅん」 着ていた服の裾から手が入ってくる。 お腹を撫でて、それから上へ上へと手を移動させた。 「ん、っ!」 「でも、キスをしたっていうのは、同じだよなぁ?」 「あ、あっ···ごめん、なさいっ」 謝ったけど、ハルはまだ怒ってるみたい。 俺の乳首をキュッと摘んで、痛いと言っても離してはくれない。 「お仕置きな」 「は、ぁ···はい···」 ニヤッと楽しそうに笑うハルに思わず首を縦に振った。

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