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第30話

夜になって「飯食いに行くぞ」とハルに言われた。 食べに行くって、どこに?と思いながら、とりあえずハルの後ろを歩いてると大きな広間って言われる部屋に連れてこられる。 部屋に入るとそこにはハルのお父さんと、怖い顔をした人たちが沢山いて、ハルのお父さんは一番奥の、謂わば主役席に腰を下ろしていた。 そりゃハルのお父さんは組長さんなわけだからここに座っていてもなんらおかしくは無い。寧ろそれが当たり前だ。 ハルのお父さんの前とハルの前、そしてハルの隣に立っていた俺の前にご飯の乗ったお膳を置いていく怖い顔の人たちも、それぞれ部屋の壁に沿ってお膳を置いては座っていく。 そしてその中には鳥居さんと世那さんもいて、俺に手を振ってくれたからヒラヒラと振り返した。 「陽和」 「こ、こんばんは!」 そんなことをしているとハルのお父さんに名前を呼ばれて慌ててそう言うと何故だかクスクスと笑われて少し恥ずかしくなる。 「ああ、お前はここに座れ」 「え、でも···ここ···」 「晴臣も隣にいるから大丈夫だ」 ここ、って言われた隣にはすでにハルが座っていて、とりあえずそこに腰を下ろすけど違和感は満載だ。 「昨日は危ない目に合わせて悪かったな」 「い、いえいえ!ハルが助けてくれたので···」 「そうか」と優しく笑ったハルのお父さん。 ヤクザなんて皆怖い人だけだと思ってたけど、ハルのお父さんもハルも、そんなことは無い。 少しするとハルのお父さんが大きな声で「いただきます」と言うもんだから急いでそれに次いで「いただきます!」と言えば周りよりタイミングが早かったらしく、俺の声だけが部屋に響いて恥ずかしくて体が熱くなるのがわかる。 「いただきます」 でもハルがそんな俺をフォローするかのように大きな声でそう言って、それに次いで今度は怖い顔の人たちが大きな声を出すからあまりの迫力にハルに「怖い···」と小さく呟けば口元だけニッと笑って「もっとこっち寄れよ」と腰に腕が回される。 「晴臣、こいつらの前でそう言う顔をみせるな」 「いいだろ、陽和が可愛いんだもんよ」 「···まあ、さっきのは可愛かったな」 ククッと喉で笑うハルのお父さん。さっきの、が何を指しているのかわかって思わずハルの肩に額をつけて「恥ずかしいよ」と言えばハルがよしよしと頭を撫でてくれた。

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