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第34話
しばらくして浅羽組御用達の医者のトラがやって来た。最近のことを事細かく聞かれ説明し、陽和の様子を見たトラは顔を顰める。
「ストレスだと思うわ」
ああ、そういえば言ってなかったけど、トラはおネェだ。見た目はすごく格好いい男なのに、親しい人の前でだけ見せるトラの本当の顔である。
「ずっと1人で抱えてたんだと思うわ。そりゃストレスも溜まるわよ。見知らぬ奴に尾けられて、助かったと思ってやって来たここで鳥居に酷いことされたんでしょ?」
「···みたいだな」
「なんで鳥居がそういう行動をとったかは知らないけど、とりあえずあんたの物に手を出したんだから叱ってやったら?」
「そんなことは今はどうでもいい、陽和は大丈夫だよな···?」
「ええ。目を覚ましたらとりあえず話を聞いてあげなさい」
トラにそう言われて頷く。
小さい頃からの俺を知ってるからかこいつの言うことは素直に聞けた。
「じゃあ私は帰るわね」
「ああ、ありがとう」
「いいのよ」
じゃあね、と帰って行ったトラを世那に送らせて、俺はベッドで眠ってる陽和の隣に座った。
「ごめんな」
そっと額にキスを落として、陽和の髪を撫でた。
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