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第39話 陽和side
ハルが鳥居さんのところに行ってしまって、その間俺は1人部屋に残りベッドに座っていた。
昨日の鳥居さんに言われた言葉が今も頭から離れない。鳥居さんがハルとそしてこの浅羽組を失いたくないのはすぐにわかったし、俺だってそれを奪いたいわけじゃない。
だから、決めたんだ、ちゃんと強くなろうって。
拳に力を入れて深呼吸をする。
強くなるにはどうしたらいいとか、まだ全然具体的な事はわからない。どうしたら怖いものがなくなるのかも。そういうのって、誰に聞けばいいんだろう。うーん···と頭を悩ませてると「晴臣、いる?」と女の人の声が聞こえてきた。この声、聞いた事がある。
「ハルのお母さん?」
そうだ。ハルのお父さんが組長で、そのお嫁さんがハルのお母さんなら、どうしたら強くなれるのか知ってるかもしれない。だってこんな大きな組織で姐と呼ばれる人なんだから。
「入るわよ〜」
「あ、あの、っ」
「あら、陽和くんじゃない」
綺麗な着物を着ているハルのお母さんは俺を見てふんわりと笑う。
「晴臣はどうしたの?」
「今、鳥居さんのところに···」
「あら···そう、ちょうどいいわ、私、あなたとお話がしたかったの。」
それは俺としても好都合で、優しく笑い「ダメかしら?」と言うハルのお母さんに「いえ、俺も話があります」と返事をした。
2人でソファーに腰を下ろし「早速だけど」と言うハルのお母さんの声に顔を上げる。
「晴臣ね、ここ最近ずっとお仕事してるでしょう?だからあなたの事蔑ろにしてないか、とても気になってたの」
「蔑ろになんて、そんな事ないです!寧ろ、いつも気にかけてくれて···」
そう言うとハルのお母さんは嬉しそうに笑う。
「それならよかったわ。だって折角沖縄旅行を考えていたのに、それも無くなってしまったでしょう?だからあなたが寂しい思いをしてないか、心配でね、何かあったら私に相談してちょうだいね!」
「はい!」
ハルのお母さんは優しい。
返事をしたら「ところであなたのお話は?」と小さく首を傾げる。
「あの、俺、強くなりたくて···」
「え?もうそんなに強いじゃない」
「違うんです、ハルを守れるくらいの、えっと···」
「強さってたくさんの種類があるの、知ってる?」
口角を上げてそういったハルのお母さんに今度は俺が首を傾げる番だった。
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