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第44話
学校の前に黒光りの高級感ある車が停まったらそりゃあ誰だって気になる。俺だってそうだ。
「なんで降りねえの」
「みんな見てる···」
学校の前に着いたのにチラチラと生徒たちがこっちを見るからなかなか外に出れない。
「ふーん」
「ハル、どうしよう···」
「···仕方ねえなぁ」
ハルが俺と反対側にあるドアを開けて車を降りて、わざわざ俺の方のドアを開けに来てくれる。
「どうぞ、お姫さん」
「余計出にくいよ」
「モタモタしてっからだろ?それとも何だよ、昨日やったせいで体痛えのか?」
「早河さんがいる前でそういうこと言わないで」
早河さんは小さく苦笑を零して「俺のことは気にしないでください」なんて言うけど、気にならないわけがない。
「あの、送ってくださってありがとうございました」
「礼なんていいです。気をつけていってらっしゃい」
「はい」
ビクビクしながら車を降りて、ハルに「終わったら電話くれ」と言いながら手を振られる。
うん、と返事をしながら俺も手を振り返し、ハルが車に乗り込んでそれから何処かに消えていくのを見てから校舎の方を振り返った。
「おいヒヨコ!何だよ今の!」
「うわっ!!」
そして大学内で一番仲が良いだろうと思われる一ノ瀬裕也(イチノセユウヤ)に後ろから抱きつかれた。
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