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第49話 晴臣side
陽和と別れてすぐ、桜樹に行けば慌てて頭を下げた桜樹の組員達に丁寧に歓迎される。早河と一緒に広間に案内されてそこに腰を下ろした。
「すみません、若は一昨日からなかなか眠っていない状態で···すぐに呼んできます」
「ああ、別に時間はあるからそんなに急がなくていいぞ。」
どうやら燈人は最近家に帰ることもできないらしい。今回のことで中々手が回らずにいるようだ。
少し待ってると燈人が部屋にやってきて俺の前に座る。何でもないように見えるけれどその顔には隈があって思わずふっと笑ってしまった。
「寝れてねえんだな」
「···お待たせして申し訳有りません」
「いい、それより話したいことがあったんだ。」
「何でしょう」
燈人は俺より年上だけれど、俺の方が立場が上だ。
落ち着いた様子でそう聞いてきた燈人に「話の前に捕まえた奴らに会わせてくれ」と頼むと一度頷いて腰を上げ部屋を出て案内をしてくれる。
「結構口が硬かったものでボロボロですが」
「ああ。拷問したのか?」
「ええ、まあ。」
「どんな」
「爪を剥いで、それから指の骨を一本一本折ったくらいです」
明るかった世界から地下に降りることで暗くなる。
さすがというべきか、そこからは血の匂いしかしなくて、思わず口元を手で覆いたくなった。
「ここです」
燈人が俺の前でピタッと歩みを止める。
顔を上げると閉められた頑丈なまるで檻のような部屋の隅で小さく丸まってる男がいた。
「入ってもいいか」
「はい」
鍵を開けてもらい中に入る、足音に怯えているのか小さくなってる男は大きく震えていた。
「お、俺は、全部、話しましたっ」
「ああ」
「もう、許して、ください···帰して、くださ···っ」
「助けて欲しいなら俺の目を見ろ」
男がゆっくりと体を起こす。
そのために床に着いた手の指はおかしな方向に曲がっていた。
「もう二度と、誰に頼まれてもこんなことするな」
「ぁ···」
「次、お前を見かけたとき躊躇無く殺してやる、わかったか」
「は、い」
歯をガチガチと言わせて、目は真っ赤に充血している。
燈人に拘束を解くように指示をして、とりあえず治療をするためにトラを呼ぶように早河にも指示を出した。
「こいつらが吐いた情報はもう全部確かなものだとわかった。同じ長身で金髪っていう情報を吐いた奴らは解放してやれ。怪我をしてるなら処置をしてやってからな」
「はい」
燈人は俺の言った言葉をそっくりそのまま桜樹の組員達に伝え、他の組にも連絡を入れるようにと言っている。そんな中、俺の足元で何度も「ありがとうございます」と泣きながら言う男に他人事のように可哀想だと思った。
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