52 / 211

第52話

赤石と早河が出て行って、会合に持っていく物の準備を終えるとちょうど昼になった。 まだ数時間しか経ってないのにもう陽和に会いたい。こんな調子で会合なんかいけんのかよ、と思いながら苦笑を零す。 電話してもいいかな、いやでも授業中だったら申し訳ないし、どうしよう。と悩みに悩んだ結果、電話をすることにして連絡先から陽和の番号を見つけて画面をタップした。 少しのコール音の後、「はい」と電話に出た陽和。 やべえ、なんかもう、今すぐ迎えに行きたい。 「陽和」 「うん、どうしたの?」 けれど陽和の様子は至って普通で、少しだけむかつく。 「いや、最近ずっと一緒にいたから寂しくなって」 「仕事は···?」 あ、今少し動揺した。 いつも陽和が動揺した時にする視線をキョロキョロさせる仕草を今も無意識のうちにしているのかと思うと口元が緩む。 「終わった。今ちょうど会合の準備も終えてな。」 「いつ行くんだっけ」 「来週だ」 ああ、そういえば陽和は会合に連れてはいけねえし、家にも帰せない。また何かあればすぐに俺が駆けつけられないし。 「俺がいない間もお前は家にいろよ」 「うん。」 「まあ、後はお前が帰ってきてから話すよ」 その後少し沈黙が走る、けどどうしても伝えたいことがあって『陽和』と名前を呼ぶ。 「俺、3日もお前と離れて我慢できる気がしねえよ」 「···俺も、そう思う」 それが本当なら嬉しい。 さっき少し感じた苛立ちも無くなる。 「好き過ぎるのも困るな」 「ふふっ、でも、俺は嬉しいよ」 ああやっぱり今すぐ迎えに行きたい。 すぐに迎えに行って、キスをして···ちゃんと顔を見て直接的好きだと伝えたい。 「じゃあ、4時に迎えに行くな」 「うん、待ってる」 それを我慢して4時に迎えに行くことを伝えると少し弾んだ声の返事が返ってきた。 電話を切ってから小さく息を吐く。 早く時間になんねえかなぁ、と壁に掛けてある時計をボーッと見つめた。

ともだちにシェアしよう!