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第58話
昨日やたらと絡んできた裕也も紗雪ちゃんも、今日は全く絡んでこない。目も合わさなければ口もきかない、何て素敵な日なんだろうか。
空き時間にラウンジで1人、カフェオレを飲んでいると「おはよ」と声をかけられた。
「あ、龍樹くん」
そうして穏やかで静かな友人もできて、これはこの大学生活最後の一年をいい感じに終われるんじゃないかと嬉しく思う。
「今日も車で来てたね」
「あー、うん、今ルームシェアみたいなの、してて」
「へぇ。あ、ごめん、この話ダメだったっけ?」
「ううん、今日は大丈夫」
「陽和くんって、意外と気分屋?」
「そうかも」
チューっとストローでカフェオレを飲む。
ほんのり甘いのが広がって美味しい。
「可愛いね、陽和くんって」
「え、何、急に」
「可愛かったから、つい」
自分の顔が男らしくなくて女の子みたいなのは自覚済みだ。だから可愛いと言われるのも仕方がない。けれど何故だか龍樹くんが言う可愛いは他の人とは意味が違う気がして少し違和感を持った。
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