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第62話

世那の控えめに俺を起こす声が聞こえてゆっくり目を開けると心配そうな顔が俺を覗き込んでいた。 「大丈夫ですか?もう着きますよ」 「ああ、悪い。」 お茶をもらって一口飲み、ふぅ···と息を吐く。さっきより気持ちが悪いのもましになった、今からは気を引き締めないと。 「着きました」 「おう」 脱いでいたジャケットを着て早河と鳥居と世那が車から先に降り、俺の方のドアを開けてそばで立っている。 そっと車を降りて会合をする会場までの道を俺を一番前に四人で歩く。組関係者が俺を見ると深く頭を下げた。 「浅羽さん、お疲れ様です。」 「ああ」 昔から仲良くしてる木川組の若頭、木川 遼(キガワリョウ)が俺の側に来て頭をさげる。本来、俺たちはただの友人で、仕事じゃないときはお互い口調を崩して話すくらいの仲だ。 「お前のところも捕まえたんだったよな。桜樹から連絡は来たか?」 「はい、二度と近づかないようにと言って解放しました」 「そうか」 遼に「ありがとう」と言ってから会場になる部屋に行く。 そこにはすでに俺と遼以外の組の頭や若頭、全員が座っていて、一斉に俺に頭を下げた。その中には燈人と赤石もいる。 それを一瞥してから俺の席である一番位の高い席に腰を下ろす。いつもならここは親父が座っているから、少し緊張するけれど、でもそんな俺より緊張している世那が側にいるから俺の緊張はすぐにどこかに飛んでいく。 早速会合が始まり、皆で話しているというのに世那はさっきからすごく気になるくらいにオロオロとしている。 「世那」 「っは!はい!!」 「そう緊張するな」 そう伝えてみるけど、緊張は解れないようで、このままじゃ何かを世那に指示した時失敗するのが目に見えてる。 「鳥居、世那に何とかしてー···」 「わかってますよー、ちょっと早河さん俺と世那は少し抜けますねー」 俺が鳥居に世那の緊張を解す事を頼む前に鳥居は状況を察して世那と会場を出て行く。 「···大丈夫か、あいつ」 「大丈夫ですよ、多分」 多分って言葉が一番信用できない。 小さく鼻で笑って、話し合いに集中することにした。

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