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第65話
ホテルに着いてそれぞれ部屋に入り俺は、さっさと部屋にある風呂に入って陽和に電話をかけようとした。
けれど初日から電話をかけて、我慢できないやつだと思われたくない。
グッと、溢れてきた感情を押し殺して携帯から手を離しベッドに寝転がる。
そのまま何もすることなくゴロゴロと寝転がっていたけれど、少しして携帯が震えだして「もしかして陽和?」と期待しながら携帯をとったのに画面を見ればカラスの文字。
そりゃ、仕事を頼んだのは俺の方だけど、このタイミングで電話をかけてくるなよ···。そう思いながら通話ボタンを押し耳に携帯を当てる。
「はい」
「遅い、遅すぎる···俺からの電話に出るのがこんなにも遅いなんて、泣けてくる」
「悪い、考え事をしててな」
「そんなことはどうでもいいよ!俺はお前が仕事を頼んでくるから急いでやったのに···」
「悪かったって、ていうかそんなに遅くもねえだろうが」
「4回コール音が鳴った!俺は3回までしか我慢できない」
皆、カラスの事は全身が黒の服で纏められていて他が白だと聞くと兎に角繊細で、落ち着いている奴なんだと勘違いすることが多いが、全く違う。
とても子供っぽいし、面倒臭い。
「お前今失礼なこと思ってただろ。」
「思ってない」
「どうせ、どうせっ···うあぁぁあ!!」
「うるさい」
電話口で叫ぶのは本当にやめてほしい。
カラスは仕事はできるのにコミュニケーションの取り方が極端に下手だと思う。
「おーい」
「何!!」
「···俺の信頼してるカラスなら、情報は少しくらい集められてるはずだと思ったんだけどなぁ」
「···お前に信頼されてる俺は情報を集めました」
けれどカラスの扱いは慣れるとすごく簡単だ。
適当に言った言葉を鵜呑みにして何でも話してくれる。
「どんな?」
「敵はお前のすぐ側だと俺は思ってる」
「あ?」
「誰かはわからないけど、俺が調べたことを全部を合わせていくと···お前の近くにいる奴じゃないとなかなかできないと思うんだよねぇ。だって、護衛をつけたばかりのお前がずっと隠していた恋人の存在を、お前と関係が浅くて遠い奴にバレると思うか?」
「···思わない」
俺が陽和の存在を隠していたことすらこいつには筒抜けらしい。
「だよなぁ。だって護衛のついているお前の恋人をわざわざ狙うなんて、お前の恋人か、お前個人に恨みがあって尚且つ関係の深い奴ぐらいしかないよなぁ」
クスクスと笑うカラスは何が楽しいのか「あー!やべえテンション上がる」と通話口の向こうで呟いた。
「で、だ。そんな関係の深い奴だから、今日からお前が会合を開くことを知ってるわけだ」
「············」
「お前が組を空ける。まあお前の親父さんがいるから組にカチコミになんて行かないと思うけど、お前に恨みを持ってる奴ならお前の恋人を殺すくらいでも嬉しいと思うんだよなぁ」
「陽和が危ないのか」
「お前の恋人、陽和って言うんだねぇ、お前が何重にも嘘の情報にロックを掛けて如何にも本当の情報に見せかけてるからさ、いろいろ騙されたわ。結局、俺も本当の情報がわかんなかったしなぁ」
「陽和だけは危ない目に遭わせたくねえからな」
ケラケラと笑うカラスの声が鬱陶しい。
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