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第72話
命さんたちに連れてきてもらったのはオシャレなカフェ。どうやらユキくんが気に入ってるところらしくて外観も内装も綺麗だ。
「ここのオムライスね、美味しいんだよ!」
「じゃあそれにしようかな」
「俺はロコモコにするけど」
「え、今のフェイント何!?」
ユキ君があまりにも無邪気にニコニコ笑うから俺もつられて笑う。
「じゃあ頼みますね」
「あ、はい」
命さんが注文をしてくれて、その内容を聞いていたけど、あれ、おかしい。俺のオムライスとロコモコとコーヒーしか頼んでなかった。
「み、命さんは食べないんですか?」
「ああ、俺は普段から昼は食べないんです」
「そうなんだ···?」
命さんの新しい発見。
ユキくんは「でも、何かちょっとは食べたほうがいいよ」って命さんの服の袖をくいくいと引きながら言う。
「じゃあお前の一口もらう」
「うん」
ユキくんの言う事には全部素直に聞き入れる命さん。
そんな二人のやりとりが微笑ましかった。
頼んだものが全部テーブルにやってきて、いただきますと手を合わせてスプーンを持つ。
ユキくんは早速スプーンでご飯を掬い命さんの口元に持って行った。
「あーん」
「ん」
当たり前のように俺の前でイチャイチャとする二人に羨ましく思う。俺はそんなにハルの前で素直になれないし、甘えたり、甘えさせてあげたりできないから。
「あ、すみません。つい···」
「えっ!?」
じっと二人を見ていたから命さんが少し恥ずかしそうに謝ってきた。
「違うんです!ごめんなさい!」
俺は慌ててスプーンでふわふわの卵を突いたのだった。
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