74 / 211
第74話
ちょっとだけ、って言っていたけど気持ちよさそうに眠っていたから起こすのが可哀想で、結局命さんが迎えに来るまでユキくんは眠っていた。
起きた時にもう夕方ってことに驚いて「ええっ!」と勢いよく立ち上がった。その姿が可愛くてクスクス笑ってる俺に「ごめんね···」と本当に申し訳なさそうな顔で言うから慌てて首を振って「大丈夫だから!」と伝える。
「今度こそ、寝ない!」
「気にしないで」
ふん!と鼻息荒く言ったユキくん。命さんはそんなユキくんを微笑みながら見ていた。
ユキくんと命さんが帰って行って部屋でポツンと1人になった。もう少ししたらご飯を食べよう。ああでもなんか、食欲湧かないなぁ。昼に食べたのが残っているのと、多分、ハルがいないからだ。
それから少しして「失礼します」と誰かがやってきた。「はい!」と背筋を伸ばして返事をするとペコリと会釈した茶髪のお兄さんが何か黒い箱を軽く持ち上げる。
「あ、これ若の所に置かせてください」
「はい」
お兄さんはハルのデスクに黒い箱の何かを置いて「では、失礼しました」とすぐに部屋を出て行った。何なんだろう、と置かれて行った簡単に開くようになってる箱を好奇心で開けてみる。
「ひっ!!」
そこには拳銃が入っていて、慌てて元の姿に戻しそこから距離をとろうと一番遠いベッドの上までずりずりと下がった。
「え、えっ!?」
今見た物がどう使う物かは知ってる。
あれは人を殺す道具だ。怖い。今すぐ捨てたい。
「だめだめだめ、落ち着け、落ち着け俺···!」
無意識に震える手を何とか押さえ込んで「ふぅ···」と息を吐く。
「は、はぁ···や、やばい、これやばい」
いや、落ち着けない!心臓がバクバクと鳴っている。
実際目の前で拳銃なんか見たら落ち着けるはずがない!!
慌てて立ち上がりどうしたらいいのかもわからず、ハルのお父さんのところに行こうって部屋を飛び出した。
ともだちにシェアしよう!