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第85話

帰りの車に乗ると鳥居が「ねえ、若」と話しかけてきた。 眠たくて重たくなる瞼を持ち上げて「あ?」と返事をする。 「何で木川組の若頭が居なくなったら後ろめたい事があるって思うんです?普通は何かがあったって思うはずじゃないですか?」 「···早河」 説明をしてる間に寝ちまいそうだ。 早河に事を投げつけると「はい」と返事をして鳥居に適当な言い訳をした。 遠慮なく背もたれにもたれて、目を閉じるとほぼ同時「あ、早河さん早河さん、お願いしますー、俺アイス食べたいからあそこ入ってー!」と鳥居が騒ぎ出す。 「若に聞け」 「若ぁ、だめ?」 「···好きにしろ」 目を閉じたまま適当に返事をすると「はい!ほら早河さんあそこ入って!!」とうるさい鳥居の声が鼓膜を揺らす。 世那が俺に「耳栓いりますか?」と鳥居に聞こえないように小声で言うのが聞こえて、思わず苦笑をこぼし「いい、ありがとな」と返した。

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