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第86話

そうしていつの間にか眠ってしまった俺を遠慮がちに起こしてきた世那。 「追われてます」 と聞こえた時に目を覚まし「誰にか検討はつくか」と聞けば首を左右に振った世那に続いて、早河にも聞いてみれば「多分、あの顔は木川の若頭じゃないですか」と返事が来る。 こういう時はあからさまに後ろを見ちゃいけない。まるでまだ気づいていないんじゃないかと思わせるくらいでいないと。向こうが焦って何をし出すかわからない。 「一定の距離あけて走れ。何か仕掛けてきたら取り敢えずは逃げろ」 「はい」 早河が運転する隣で鳥居は「写真ゲットー!」と声を上げた。どうやら木川の写真をカメラに収めたらしい。それは証拠になるから有難い。 「動画も撮ります?」 「何か仕掛けてきたら頼む」 「はーい」 まだ慌てる時じゃない。 世那は初めてのことでおろおろしてるけど大丈夫だと頭をポンポンと撫でると少し安心したようで「すみません」と謝ってきた。

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