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第87話
「何もなかったっていうのが不気味ですよねぇ」
俺たちの後をつけていた木川の車は、浅羽組が近くなるにつれてだんだんと距離を離して最終的にはいなくなった。
組について鳥居のいう言葉に全員が同意をして、ゆっくりと車を降りると組員達が頭を下げて俺たちを待っている。
厳つい花道を通って親父に帰ってきたことと会合の事を報告し、そそくさと陽和の待ってる部屋に向かう。
「───陽和」
「っは、ハル!?」
部屋に入るとソファーに座っていた陽和が慌てて俺の方にやってきて思い切り抱きついてきた。陽和の匂いがすげえ落ち着く。
「いつ!?今!?」
「おう、今帰ってきた」
お出迎えしたかった。と言う陽和に「今熱い出迎えしてもらってるけど」とキスをすると小さく笑って「それもそうか」とキスをし返される。
「あ!そうだ···。何かハルに荷物二つ届いてるよ」
そう言われて思い出したのはカラスの言葉。
薬が入っているんだろうと思って自然と顔が険しくなる。
「ハル···?」
「···あ、ああ。悪い」
「何か、嫌な物なら、俺が捨ててくるよ···?」
「いいよ、ありがとな」
陽和の不安そうな顔、そっと頬を撫でるとへにゃっと柔らかく笑って俺の肩に頬をつけて首筋にちゅ、と小さく音を鳴らしてキスをしてくる。
「ハル、あの···」
「ん?」
その体勢のまま髪を撫でてやってるとボソボソと小声で話し出した陽和
「今日は、この後、忙しいの···?」
「いや、そんなことねえけど」
荷物を片付けるくらいだし、ああでも、届けられたものの片付けもしなきゃなんねえのか…
「お、俺、ハルと···したい···」
「············」
「だ、めかなぁ···?」
「······いや」
「あ、ごめんね···こんな、疲れてるのにうざいよね」
陽和から直接的な言葉で誘われたことがなくて動揺してしまう。それを俺がうざいと思っているんだと勘違いした陽和が俺に抱きつく力を弱めて「ちょっと休む?」と優しく笑って言う。
「陽和、そのまま」
「え?───っひゃ!」
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