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第92話

「陽和、悪いけど皆が広間で食ってる間に風呂入りに行きてえから、ここで飯食うぞ」 「うん」 ベッドのシーツは替えたし陽和はソファーに座る俺に向かい合う様に触って肩に顎を乗せぐったりとしてる。 背中を撫でて「体勢きつくねえか?」と聞けば「さっきの方がきつかった」と言われて苦笑を零し「悪かった」と謝る。 「気持ちよかったからいいけどね。あ、あれ、どうするの···?」 あれ、と言って俺の机の方を指差した陽和、その先には黒と普通の段ボールの二つの箱があって、そのうちの一つには薬が入っていることが分かってる。 陽和をそっとソファーにおろしてその箱の所に行き一応警戒をしながら黒い方を開けるとチャカが入ってた。 それは以前頼んでいたものだから別になんともないけれど、陽和が見たら怖がるだろうと思ってそそくさとそれを片付ける。それから段ボールの方を開け中を覗くとやっぱり薬が入っていた。とりあえず親父に話をして···と思っていると不安そうな陽和が俺を見ていることに気付いた。 「どうした?」 「···あの、俺、ハルがこの仕事をしてるってわかるし、だからこそ仕方ないって理解してるんだけど···」 「···もしかして、黒の箱の中見たのか?」 「うん。ごめんなさい」 正直に本当のことを言って素直に謝った陽和。 そもそも怒るようなことじゃないけど、今後はもし同じ様な状況で、その箱の中に何か罠があったら···なんて考えると恐怖が襲ってきて、「もう二度とするなよ」なんて冷たい言葉で返してしまった。 「···う、ん」 「悪い。もし何か罠でもあったらって、考えると怖ぇから」 「ううん、いいの。わかってるから大丈夫」 困った様に笑った陽和に居た堪れなくなって、俺がこんな家庭に生まれてなかったらな···なんて酷いことを考える始末。 「本当に悪い。俺のせいで色々」 「ねえハル。俺ね、今の事件が解決したらハルと行きたいところいっぱいあるんだー!」 「陽和···」 「だからね、そんなネガティヴに考えないで、楽しいことのために頑張ろうよ」 俺に向かって手を差し伸べるから、陽和に近づくとしゃがむ様に言われてその通りにすると髪をワシャワシャと撫でられる。 「ね、みんなで、一緒に頑張ろう」 「ああ」 マイナスな気持ちがどこかに飛んで行った。ぽっかりと空いたそこには代わりに陽和からの愛情が埋まって、ほんのりと暖かくなる。

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