96 / 211

第96話

酒を持って部屋に帰ってきた。 しばらく1人で楽しんでいたけれど、そろそろ寝るか、と寝る準備を済ませてからベッドに入ると隣にいた陽和がパッと目を開けた。 「悪い、起こしちまったな」 「···ううん、ハル」 「ん?」 そっと抱きしめて髪を撫でると何かをムニャムニャと呟いてから目を閉じて眠った陽和。何て言ったのかわかんねえけど、悪いことではないと思う。 幸せそうな寝顔に癒される。 「はぁ···」 そっと目を閉じる。 今いろいろなことが起こってるけれど、陽和といるとそんなものは考えなくて済む。陽和の匂いをまたスン、と鼻を鳴らし嗅いで、そのまま深い眠りに落ちたのだった。 「若!若っ!!カラスから電話来てます!!」 朝になった。けれど空が少し暗い程の時間だ。カラスの時間関係なく電話をかけてくるのは正直すごく迷惑だ。 「···世那、陽和が寝てるから静かにしろ」 「すみません···でもカラスが···」 「はぁ···貸せ」 部屋にある電話の子機を持ってきた世那は通話ボタンを押して保留を解いた。俺に子機を渡してはすぐに部屋を出ていく。徹夜でもしていたのか?フラフラとしていた足取りがそう思わせた。 「───はい」 「俺が電話した時に陽和くんとイチャイチャしてるってどういうことだよ!!」 「···うるせえ」 「う、うるせえって、俺が、こんなに頑張って···!!」 「要件を話せ」 面倒臭い。話をしろと言えばブツブツ文句を言いながらも「犯人見つけたよ」と言う。 「でも、その犯人の名前を教えてあげる前にぃ、陽和くんと話させてよ」 「はぁ?陽和は今寝てる」 「起こしたらいいだけじゃんか。もう朝の4時だよ?みんな起きてるよ」 「起きてねえよ」 やんわり拒否するけれど、でもやっばり情報は教えてもらいたい。 申し訳なく思いながら控えめにトントン、と陽和の肩を叩けば嫌そうに眉間に皺が寄るのが見えた。 「陽和」 「んー···」 「陽和、悪い、起きろ」 「ぅ···な、にぃ···?」 目を擦りながらそういった陽和に「電話」と言って子機を差し出すとポワポワとした表情でそれを受け取り相手が誰かなんて聞くこともなく「はい」と電話口に話しかけた。

ともだちにシェアしよう!