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第98話

泣き止んだ陽和は俺を見て下唇をグッと噛んだ。 どうやら不満があるらしい。 「何だよ」 「···何でもない」 「そうか、なら寝ろ」 まだ4時半にもなってない。 ベッドに寝かせて、パッチリと大きな目を開ける陽和。目元に手を持っていくと今度こそ大人しく目を閉じて、けれどそれでも何か納得していないようで「ハル」と目元を隠していた俺の手を取りじっと見つめてくる。 「あの人と関わるの、やめてほしい」 「あの人?カラスのことか?」 「うん」 冗談で言ってるわけじゃないのはすぐにわかったけれど、だからといって素直に頷ける内容でもない。 「それは無理だ」 「どうして」 「あいつは仕事に協力してくれてる。」 「でも、情報屋って言ってた、お金さえ渡せば簡単に裏切ってハルの情報なんて皆に全部知られちゃうよ」 「···陽和、怒るぞ」 「だってそうじゃんか!」 「陽和!」 「···わかってくれないなら、もういいもん」 クルリと俺に背中を向けた陽和はそのまま小さくなって眠り出す。 「あいつは金で雇ってるわけじゃない」 「············」 「俺はあいつのことを信頼してる、お前に心配される仲じゃない」 「············」 無視を決め込む陽和からは何も反応をもらえなくて、俺ももうひと眠りしようと目を閉じた。 そして、次俺が目を覚ました時、隣に陽和がいなかった。

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