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第100話

キョロキョロとそこら辺りを見回したけれど陽和は見当たらない。そこでまた電話をかけてみたけど、それも通じないし焦っているといつか会ったことのある顔がいた。 「あ、おい、お前」 「あ!お前はっ!」 「白石陽和は?」 「陽和?あ、さっきまでそこの教室にいたはずだけど」 この前陽和にしつこく絡んでいた奴。 俺を見て早速啖呵を切りだしたそいつに陽和のことを聞けば間抜けな面をしてそう言った。そこの教室と言って指が指された教室を見たけれど陽和はいない。 「あれ、いない」 「陽和に連絡してみてくれ」 「えー、俺あれから陽和に避けられてるんだよ」 「知らねえよ」 「チッ、後でなんか奢ってくれよ」 「わかったから早くしろ」 渋々と電話をかけだしたそいつはしばらくして「出ない、やっぱり嫌われてる!!」と俺の腕をガシッと掴む。 「なあどうにかしてくれよー!俺あいつと話すの楽しいから好きなのにさぁ!!」 「おい···離せって···」 「嫌だ!お前が俺達の間をどうにか取り持ってくれよ!!」 「あー、面倒くせえ···」 泣きついてくるそいつをなんとか離そうとし他、そんな俺達の後から「ハル···?」と陽和の声が聞こえてきて慌てて振り返る。 「え、な、なんでここ、いるの···?」 「お前が─···」 「陽和くん、あの人誰?」 陽和に理由を話す前に知らない男が陽和の隣にたってそう言った。 「あ、お、俺の友達だよ」 「ふぅん」 俺の腕を掴んでいた男をなんとか離させて陽和のすぐそばに寄ると何故か1歩俺から遠ざかった。 「あ?」 「···か、帰って」 「···お前の勝手な行動がいろんな奴らに心配をかけてるの、わかってんのか」 「そ、そんなこと言ったらハルだってそうじゃんか!!」 「···お前があいつに何を言われたかなんて知らねえけどな、自ら危険に飛び込むんだ、覚悟はできてんだろうな」 「で、できてる、よ···」 「ならいい。ただし、お前のこの行動のせいで起こる事に俺は何も手助けはしねえ」 それだけ伝えて踵を返し来た道を帰る。 鳥居が待ってる車に戻れば「どうでした?」と聞いてきたけれど俺の顔を見た途端何かがあったと察知してとりあえず、と煙草を寄こしてきた。 「陽和くんはいたんですね?」 「いた。けど覚悟はできてるらしい。今回のことでもし何かが起こっても俺は動かねえ」 「···極端ですねぇ」 「俺には俺のすることがある、それはもちろん陽和にだってだ。人のするべき事を止める権利は俺にはない」 「でも、若が動かなくても、俺は動きますからね」 「勝手にしろ」 煙草を吸って心を落ち着ける。 家に帰ったら木川のことを燈人に連絡しよう、燈人と相談して今後どうしていくかを考えよう。そう思いながらため息混じりの紫煙を吐いた。

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