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第103話 陽和side

「また、やっちゃった···」 ハルが帰ってから俺は大学のラウンジで項垂れていた。今朝勝手にハルの家から出てきてしまったことも、とっくに後悔していたし、電話も出なきゃってわかってるのに、俺の気持ちを理解してくれないハルに腹が立ってそうすることをしなかった。 「お、おーい、ひよこ」 俺の右隣に座って勝手につけられたあだ名で呼ばれ、思わずギロっと睨みつける。···大体さぁ··· 「なんで裕也がハルと一緒にいたの!」 「あいつハルって言うのか!いや、凄い剣幕でお前のこと探してたからさ、俺が手助けしてやったわけ!」 「手助け···?俺に電話かけてきただけでしょ、出なかったけど」 「出なかったけど、ってやっぱりわざと!?」 そんなうるさい裕也とは反対に左側に座る龍樹君が「大丈夫?」と甘いカフェオレを買ってきてくれた。 「あ、ありがとう」 「うん、ところでさっきの人、凄く怖い顔してたね」 「あはは···そうだね···」 まさか極道なんだよー!なんて言えないし、適当に笑って返すと「あ!そういえば!」と裕也のうるさい声が鼓膜を揺らす。 「ハルさん何か奢ってくれるって言ってたの忘れてた!!」 「そんな約束したの?」 「ああ、お前を見つけるの手伝ったらって」 「ふーん」 ていうか裕也が同い年のハルを"さん"付けで呼んでるあたりが面白い。 「俺さ、あの人どこかで見たことあるんだよね」 そんな面白いという感情が龍樹くんの言葉でスッと消え失せた。 「あれ、ここら辺で有名な浅羽組の若頭じゃない?」

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