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第107話
「お腹空いた···」
「うるさい」
部屋で拘束されて何時間くらいだったのかはわからないけれど、どうにもお腹がすいてしまって気持ち悪くなってきた。
「吐きそう···」
「はあ!?」
そばにいる龍樹君が慌てて立ち上がりどこかに行ったと思えば遼さんが一緒に手に食べ物を持ちながらやって来て俺の前に座る。
「ほら、口開けろ」
「手、解いてくれたら自分で食べる」
「解いたら逃げるから俺が食べさせる」
「···ねえ、多分俺がいなくなったとしてもハルはこないと思うよ?タイミングが悪すぎる」
「あ?」
何でだ?って顔する木川に説明をするのが面倒だけど、仕方ない、話してやろう。とそのまま言葉を続ける。
「さっき喧嘩したんだよね、喧嘩っていうか、意地の張合いなんだけど。そのせいで何かが起こっても自分で解決しなきゃダメなんだ、そう、言われたから」
「···ハルは自分にも他人にも厳しいからな」
「···それがあんたに裏切らせる原因?」
「······まあ、ある意味そうだな」
口元に木川がご飯を乗せたスプーンを持ってくる。
「食え」
「ん」
まるで餌付けをされてるみたい。
けれど不思議と嫌な感じはしなくて、もしかしたらハルとちゃんと話し合えば今起こってる問題は解決すんるんじゃないか?なんて安易な考えが頭に浮かんだ。
「まだ食うか?」
「うん」
「飲み物は」
「いる」
けれど突然木川の様子がおかしくなった。
息が荒くなってきてイライラしてるのかバッと立ち上がり部屋の隅で深呼吸を繰り返している。
「どうしたの···?」
「何でもねぇ!!」
何かに耐えているように唇を噛んで、左腕に自らの爪を立てて傷つけている。
「ダメだよ、そんなことしちゃ」
「うるせえよ!!黙れ!!」
切れた唇から血を流す木川に敵でありながらも心配になった。
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