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第110話

世那の部屋の前でノックをして声をかけても返事がなくて、居ないのか···とそこに入ることを諦める。 さて、ならどこに行こう? そうだ、幹部室にでもお邪魔しよう。 そんな軽い考えでやってきた幹部室では未だ早河と命、それに八田が何やら作業をしていた。 「あれ、お前ら何してんの」 「忘れてた仕事片付けてます」 早河が目の下に隈を作りながらそう言う。 そんな状態で仕事をさせるのは可哀想だ。忘れていたからって早河には、俺と同級生で仲のいい八神琴音(ヤガミコトネ)がいるし、命にはユキがいる。 それに確か八田の所にも小さなガキがいて、それぞれ世話をする側だから帰ってからもきっと何かと忙しいに違いない。 「いいよ。俺やるからお前らは帰れ。全員家で待ってる奴いるんだろ」 「いいんですか!!」 八田が勢いよく立ち上がる。 そんなに帰りたかったのか。と思いながら「ああ、いいよ」と言えば「すみません!お願いします!」と俺に仕事の詳細を話して荷物を纏め、帰っていった。 「ほら、早河も命も」 「いや、でも···」 「流石に···」 渋る2人、仕方ない。最終手段だ。とまずは琴音に電話をかけた。 「はいはいー」 久しぶりに聞く独特のイントネーション。 「おい、お前の主人が帰らねえって言ってるぞ」 「はぁ!?何それ、ちょっと代わって!」 琴音の大きな声が聞こえたのか早河は顔を歪める。 携帯をそのまま早河に渡すと何やら大声で怒られているようで「わかった、帰る、帰るから···」と1人でコクコクと頷いていた。それからすぐ通話を切って俺に電話を返してきた早河。 「次はユキにかけよっかなー」 「帰ります!!」 命も慌てたように立ち上がり、二人はそれぞれ八田と同じように仕事の詳細を話してから幹部室を出ていった。

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