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第112話
この苛立つ感情をどこに持っていけばいいのかわからなくて、このままだとなかなか眠れないだろうし、組の中をブラブラと歩き回る。
「晴臣」
名前を呼ばれて振り返れば親父がそこに立っていて「寝ないのか」と聞いてきた。
「寝れねえんだよ」
「···陽和が居ないからか?」
「違う。あいつが···ああ、もういい、くそっ」
「何をそんなに苛立ってるんだ」
「···ちょっと外に行ってくる」
「一人で行くな。それにもう遅い、今日は嫌でも寝ろ」
親父に腕を掴まれそのままズルズルと部屋に連れていかれる。俺の部屋かと思えば親父と母さんの部屋で、いつもならとっくに眠っているはずの母さんは、部屋に来た俺を見て優しく笑った。
「晴臣、あなた、また煙草吸ってたのね」
「ああ」
「ちょっとずつ減らしていかないと。」
「···努力はするよ」
母さんに頭を撫でられる。
昔はよく、こうやって母さんに甘えてたなぁ。
「今日は一緒に寝ましょうか」
「えっ、いや、いい、部屋に帰る」
「昔、川の字で寝たわよねぇ」
「ちょ、母さん!」
母さんに半ば無理矢理布団に寝かされる。
俺はどうしても、母さんに逆らうことが出来ないからそのままいうことを聞いて大人しく目を閉じた。
「若!門の前に陽和さんと木川が!!」
朝、その報告を鳥居から聞いた時、夜に感じた倍の面倒臭さと怠さを味わうことになった。
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