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第116話 陽和side
「お、おい」
木川の声がすぐ側で聞こえてる。
その筈なのに、おかしいな、何故か遠くから話しかけられているような気がして、よく聞き取れない。
「なあ、おい!陽和!」
「···あ、な、何」
「すぐに謝りに行こう、俺のことはもういい、だから」
「いい、いいの。多分、もう無理」
ハルに直接お願いに行こうって話になって、ここまで来たけど、逆効果だった。
いや、お願いは叶った、けれど俺はそれ以上の苦しみを得た。
「お前が俺のために犠牲になることはねえんだよ!俺が悪かった、だから、早く謝りに···」
「いいってば!!」
悲鳴のような声が出た。
自分でも悲しい声だと思う。
「···ごめん。俺、家に帰る」
「陽和···」
「多分、遼はもう、大丈夫だから。」
「陽和っ」
「何だよっ!!」
泣きそうになるのを堪えて、さっさと帰ろうとしてるのに、何で止めるの。
腕を掴まれて引き寄せられる。木川の顔を見れば強い目で俺を見ていた。
「俺のところに来い。」
「···行かないよ」
「今のお前を、1人にしちゃいけない気がする」
「大丈夫。俺、強いから」
「泣いてるくせに」
いつの間にか涙が溢れていて、頬を伝って落ちていく。
苦しい、息の仕方がわからなくなったみたいだ。
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