117 / 211
第117話
半ば無理矢理引き摺られるように木川組に連れ戻され、遼の部屋に入れられる。
「ココア、好きか?」
「···うん」
「ちょっと待ってろ」
遼がココアを入れてくれる。
温かいカップを手に持てば、凍っていた心が溶けていって、また涙が止まらなくなる。
「···ハルは、許してくれるって思ってた」
「ああ」
「でも、ハルは···凄く、仕事に厳しいから」
「···············」
「俺、ハルのこと、ただの男の人だと思ってたよ」
わかっていたつもりだった。
でも、全く違う。俺は全然わかってなかった。
「そんなわけ、なかったのに」
「大抵は、そうなんだろうよ。」
「···············」
「あいつも、俺だって極道やってる。でも大抵はそうじゃない。」
「···そうだね」
「お前の感覚はおかしくもないし、何も間違ってない。ハルの器が小さいわけでもない。ただあいつは一生懸命なんだ。···って、俺がこんなこと言ってもな」
遼が俺を励まそうとしてくれる。
その気持ちが嬉しくて自然と笑みが漏れた。
ともだちにシェアしよう!