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第118話 晴臣side

目を覚ますとトラが居て、俺の頭を撫でた。 「無茶しすぎよ」 「············」 「今日はもう休みなさい」 「···仕事」 「だめ」 「···トラ」 「なあに」 俺の髪を撫でていた手が止まる。 「俺、間違ったのかも、しれない」 「それで、悩んでいるの?」 「···いや、悩んではない。多分、間違ったってわかってるし、どうしたらいいのかも、大体、わかってる」 「じゃあ、行動しなきゃね」 「でも、そうしたら多分、また間違える」 体調が悪いからだ。 こんなに弱音がボロボロと溢れてきて、それと同時に鼻の奥がツンとする。 「もっと、親父みたいに、ちゃんと判断できる人になりたい」 「それは生きていく中で学んでいくものなのよ」 「今すぐじゃなきゃ、また、間違えるんだ」 遂に涙が目尻から零れた。 トラは困ったように笑ってその涙を拭う。 「確かに、間違えたくはないと思うけど、間違えることが成長に繋がるのよ」 「···間違えは、取り返せない」 「あんたは完璧に成りたいわけじゃないでしょう。仮にそうだとしても成れないんだから、そんなに焦って答えを探さなくてもいいの。今のあんたに必要なのは休む事よ」 「でも···」 「言うこと聞けないなら、暁に頼んであんたのこと、ここに縛り付けるわよ」 「嫌だ」 トラが俺の視界を、目を手で覆うことで暗くする。 「しばらく休みなさい」 「俺、不安でたまんないんだ」 「じゃあ、体調が治ったら不安なこと、話に来て」 「···うん」 トラは優しい。 俺のことを否定もしないから。でも肯定もしない。そのあたりが、俺が本音をボロボロと零してしまう理由なんだと思う。

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