120 / 211

第120話

数日経てば体調も良くなり、トラに不安な事を話そうと思っていたけど、一度そんなことも忘れてしまおうと、トラに連絡だけいれて、俺はすぐに家を離れ、昴さんの所に向かった。 「久しぶりだな、晴臣」 「しばらくお世話になりまーす」 昴さんの家に上がって、床に寝転がる。 お茶を淹れてくれた昴さんに「ありがとう」と言ってそれを飲んだ。 「お前にちょっと手伝ってほしいことがあるんだが」 「いいよ」 「近所の子供たちがな、後で向こうにある山に遊びに行くんだと。危ねえからついて行ってやってくれ」 「おう」 昴さんはどうやら近所の人達から好かれてるらしい。 動きやすい服に着替え、子供たちが集合場所であるこの家の前に来るのを待ちながら、庭にある小さな畑をぼーっと見た。 「あれ、何?」 「茄子」 「あれ食うの?」 「ああ。うまいぞ」 「そっか。楽しみだな」 そんな会話をしていると子供たちの話し声が聞こえてきた。 「行ってくる」 「気をつけてな」 立ち上がって玄関から外に出ると5人の男の子と女の子がいて、でかい声で「こんにちは」と挨拶する。 「おう、こんにちは。山に行くんだろ?昴さんは忙しいから俺がついて行くよ」 「お兄ちゃん、誰?」 女の子が大きな目で俺を見上げる。 「俺はハル。ほら、いくぞ」 「うん!」 昔、小さい時、俺も、よく昴さんと山に遊びに行った。 まだ何も知らない、子供の時。 「ハル!この山の上に神社あるんだよ!!」 「ああ···あの神社か」 男の子が山の上を指さす。 「あの神社、怖い」 「怖い?」 「狐さんのお顔、怖いの。怒ってるのかなぁ」 そんな話をする子供たちに、確かに神社にいる狐の像の顔が怖いなんて思ったことあったな。と昔のことを思い出しながら、山に続く道を歩いた。

ともだちにシェアしよう!