126 / 211
第126話
いつの間にか鳥居さんは帰っていた。
俺はどうやって部屋に入たのかも覚えていないくらい、心が悲鳴をあげていた。
甘えていたのは俺で、いつも俺を守ってくれていたのはハルで。いつの間にかそれが当たり前に感じていた。
だからあの時、お願いなんて言えたんだ。
世間的に見ても、いけない事を見逃してって言った。そしてその代償として俺に別れを告げたハル。
ハルは、どこまでも優しい。
あの場なら普通、もっと怒ってもよかった。
俺も、遼も···今こうやって普通に過ごせていることは当たり前なんかじゃない。ハルが責任を全部背負ってくれたからだ。
「ハル···」
俺にだけ見せる無防備な寝顔に、笑顔に、悲しそうで悔しそうな顔。
それはハルが俺を信じていてくれて、ハルが俺を赦していてくれたからこそ、見れた。
自分の我儘や間違いに気付いたところで、もう手遅れなのは知ってる。でも、どうしても謝りたい。
信じていてくれたのに、裏切ってごめんなさい。って。
「···ハル、どこにいるの」
会いたい、今すぐに。
ともだちにシェアしよう!