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第127話 晴臣side
「昴さん!これでいいのか?」
「お前やっぱり下手くそだな」
「下手じゃねえ。」
俺は料理をあまりしたことが無い。
だから、最近はちょっと挑戦してみようと、昴さんに言われた通り野菜を切ってみると、下手だと言われて肩を落とした。
「野菜すら上手く切れないなんて···」
「じゃあ米」
「嫌だ。あれはもうトラウマ」
「米も研げねえのか」
一度、それにも挑戦ことがある。
その時普段穏やかな母さんが激怒した。
それは米を研いだ後の水を流す時、たくさんの米が流れ出たから。
あの時の母さんは今思い出しても怖い。
「そう言えば、晴臣、許しが出たぞ」
「許し?」
「兄貴が、そろそろ帰ってきてもいいってよ」
「え。何、親父とそんな話してたのかよ」
ここに来てから早3週間。
生活にも慣れ、何も考えない日々が続き、普段の事を忘れてのんびり過ごせた。
近所の子供たちとも仲良くなって、最近じゃ毎日のように遊んでいる。
「俺、来週いっぱいはここにいる」
「へえ。気に入ったか?この生活」
「うん。久しぶりにこんなに穏やかな気持ちになれたから」
都会より、空気が美味しいし、気持ちのいい場所だ。
「まあ、お前の好きなようにすればいい」
「ありがとう」
むこうに帰ってからも、ちょくちょくこっちに来よう。
昴さんの迷惑なんて考えずに、1人でそんなことを考えていた。
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