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第130話 陽和side
鳥居さんから電話があった。
それは鳥居さんに会ってから1週間が経った日のこと。
電話で聞かされた内容は信じ難いもので、慌てて家を飛び出して大きな病院に向かい、走る。
言われていた場所に行くと、ハルのお父さんとお母さん、それに早河さんに命さん、鳥居さんが居た。
その人達をかき分けて、病室のベッドに近付くと、俺の大好きな人が目を閉じて眠ってる。
「···な、なんで···?」
「何箇所も刺されたんだ」
鳥居さんの声が脳内で響く。
規則正しい機械音もうるさいくらいに聞こえる。
「刺した、人は···?」
「わからないんだよ」
「わからない、って」
「組の目の前で、何度も何度も若のことを刺してる。捕まってもいいから、確実に若を殺したかったんだろうね。」
そんな説明は聞いてない。
震える手でハルの手を掴むと、温かくてまだまだ死んでない事が実感できる。
「陽和」
「···はい」
ハルのお父さんが俺の肩を軽く叩いた。
「晴臣はどうせ、すぐ起きる。その間俺達はやらなきゃいけない事がある。···晴臣の事、お前に任せてもいいか」
ハルのお父さんは、俺を信頼してくれてる。
それを裏切れるわけがない。
「はい。ちゃんと、ハルのこと見てます」
「頼んだ」
ハルのお父さんは優しく笑った。
その隣で、お母さんも。
「若が起きたら連絡してね」
「はい」
そして、俺はハルと二人きりになった。
穏やかな顔で眠ってるハル。何故だか涙が溢れてきて止まらない。
「ハル···ハル、起きて」
ハルと手を繋いで祈るように呟く。
「ちゃんと謝らせて」
涙がシーツに落ちて、小さく乾いた音を立てた。
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